本年度は、へき地に在住する住民の歯科医療に関する現状に関して調査を行った。対象は、鹿児島県の離島の中で歯科診療所が設置されていない屋久島町口永良部島、三島村(竹島、硫黄島、黒島)、十島村(口之島、中之島、諏訪之瀬島、平島、悪石島、小宝島、宝島)の計11島に在住する20歳以上の住民875名とした。これらの島には歯科医師は常駐しておらず、現地での歯科治療は離島歯科巡回診療によって行われている。各島には年2~4回訪問し、滞在期間は1回あたり1~4日で、歯科巡回診療車内や集会場などで診療を行っている。データ収集方法は、歯科治療の受診状況、意識、現状に対する意見などの内容について、選択式、自由記載による無記名式アンケート調査用紙により行った。回収率は58.6%であった。その結果、回答者のうち75%が口の中で気になる事があると回答し、75%のうち25%が「虫歯や歯周病の予防」、18%が「入れ歯、差し歯の状態」が気になると回答した。歯科治療を受ける場合、72%が「治療の必要性のある部分はすべて治療し、治療後の定期検診も受けたい」と回答したが、「定期的に歯科医院へ通院している」と回答した者は半数にも満たず、46%が「症状がある時のみ通院する」、17%が長期間通院していなかった。現在の歯科治療を受ける状況に対して、「やや不満」、「不満」との回答は23%であり、希望として、島外の歯科医院への受診は時間、費用の観点から難しく、島内で完結できる体制づくりを求める意見が多く見られた。以上の結果より、へき地における歯科医療の現状の一端が明らかとなった。
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