本研究の目的は、摂食嚥下機能と骨格筋量の関連性を解明することで、超低出生体重児の食行動の問題の解決方法を立案することである。そのためには、まず定型発達児、低出生体重児における摂食嚥下機能と骨格筋量の関連性を解明することが必要である。保育園に通う健康幼児(3歳から就学前)を対象とし、調査項目は、性別、年齢、身長、体重、咬合力、舌圧、舌筋厚、握力、咬筋厚・下腿後面筋厚、下腿周囲長、体組成とした。正出生体重児らでは、摂食嚥下機能の一つである舌圧は年齢、身長、体重、握力、咬筋長、下腿周囲長、うがい評価、骨格筋量と有意に相関した。口腔機能の巧緻性を評価したうがい評価は年齢、身長、体重、握力、咬筋長、下腿周囲長、骨格筋量、舌圧と有意に相関した。また、最大咬合力は年齢、身長、体重、握力、骨格筋量と有意に相関した。年齢因子を除外しても、舌圧と握力、うがい評価と身長、最大咬合力と骨格筋量は有意に相関した。低出生体重児らでは、舌圧は、年齢、身長、体重、握力、うがい評価、骨格筋量と、うがい評価は、年齢、身長、体重、握力、下腿周囲長、骨格筋量、舌圧と有意に相関した。年齢因子を除外しても、舌圧と握力は有意に相関し、相関の強さは正出生体重児らより強かった。低出生体重児らは正出生体重児らに比べ、3歳児では舌圧と握力が有意に小さかった。4歳児では、体重、カウプ指数、体脂肪量が、5歳児ではカウプ指数、体脂肪量が有意に小さかったが、6歳児では有意な差は認めなかった。以上より、低出生体重児の摂食嚥下機能は、全身の筋力をの指標とされている握力の影響をより受けやすいことが示唆された。また、低出生体重児の摂食嚥下機能は4歳までにキャッチアップされる可能性が示唆された。超低出生体重児らにおいても、食行動の問題解決には全身発達を考慮することの重要性が示唆された。
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