研究実績の概要 |
歯周病は成人期以降における重要な健康課題であり,健康日本21(第二次)にも「歯周病を有する者の割合の減少」が目標項目として設定されている.しかし,地域保健・健康増進事業報告の歯周疾患検診実施率によると,依然として半数近くの自治体が検診を未実施である.そこで我々は,歯周疾患検診(歯周病検診)の全国1,741市区町村の実施状況を把握し,実施率や受診者率の地域格差に影響する背景要因を地域保健サービスや社会経済的指標から明らかにし,歯周疾患の地域格差縮小に向けた指針とするため,以下の研究成果を上げてきた. まず,歯周疾患検診受診者率(捕捉率)を全国と都道府県・市区町村毎に算出した.平成25年度の全国推定受診者率は3.9%であった.また,自治体毎の推定受診者率は人口規模と関連が認められた. そして,全国1,741市区町村に対する実態調査は,1,142自治体から回答を得た(回収率:65.6%).回答者の職種は保健師61.5%,歯科衛生士18.9%,歯科医師1.5%であった.実施785自治体における実施内容は,口腔衛生状態の診査が94.9%,歯周組織の状況の診査(CPI等)が94.1%,診査後の口腔衛生指導が66.1%,自己負担が無料と回答した自治体は53.3%であった.未実施357自治体における理由(複数回答可)は,他の検診(がん検診等)の優先が56.6%,予算等の経済的理由が36.7%,検診担当歯科医師の不足等の人材的理由が26.9%であった.また,歯科専門職以外が回答した自治体や人口規模の小さい自治体は,未実施と回答した割合が高かった. 歯周疾患検診の実施率や受診者率の向上に向けて,歯科保健事業あるいは健康増進事業の担当者にその重要性を説くと共に,人口や予算の規模が小さい自治体でも実施可能な検診モデルの構築が求められる.
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