継続申請をさせていただいた最終年度の平成30年度は、継続して追跡調査を行った。調査項目は、年齢、性別、既往歴、Barthel index、Mini-Mental State Examination、Mini Nutritional Assessment Short-Form、血液検査値、食事形態、口腔の状態、舌圧、水分量等に加え、転記を調査した。 研究期間全体を通じて得られた成果は、以下である。愛知県内の4つの高齢者施設入居者295名を対象として口腔内の検査を行い,頚部聴診による嚥下障害スクリーニング,栄養状態,日常生活動作および認知機能を評価した.発熱状態の追跡が可能で,データ欠損のない112名(男性12名;平均年齢80.4±8.9歳,女性100名;平均年齢87.1±8.4歳)を分析対象とした.発熱日数を① 0日:47名,② 1~4日:38名,③ 5日以上:27名の3群に分けたところ,2変量の関係で発熱日数と有意な関連が認められた要因は,嚥下状態,栄養状態,日常生活動作,認知機能および脱水の状態であった.さらに,発熱日数を従属変数,独立変数に発熱日数と有意な関連が認められた要因を投入した順序ロジスティック回帰分析を行ったところ,頚部聴診による嚥下音や呼吸音に異常が認められた者は発熱リスクが有意に高かった(オッズ比[95%信頼区間]= 3.39[1.35-8.50]).したがって、頚部聴診により嚥下音や呼吸音に異常が認められ,嚥下機能の低下が疑われる者では,発熱リスクが高くなることが示唆された. また、一年後の死亡および生存についての2群について、生存者において補綴物で回復した臼歯部の咬合のペア数と有意な関連が認められた(オッズ比0.85,B[95%信頼区間]=-0.17[0.75-0.96])。したがって、補綴物で臼歯部の咬合を回復することは、高齢者施設利用者において、1年後の生存に影響を与える可能性が示唆された。
|