本研究の目的は、新人看護職員に対して臨床の看護実践に関する実地指導・評価を行う実地指導者に焦点を当て、実地指導者の教育指導方法の学習や実際の教育指導場面の問題の解決のためのシミュレーション教育プログラムを開発し、その効果を明らかにすることを目的とした。 今年度は、まず、実地指導者に求められる5つの能力(新人看護職員に教育的に関わる能力・新人看護職員と適切な関係性を築くコミュニケーション能力・新人看護職員の置かれている状況を把握し一緒に問題を解決する能力・新人看護職員の個々の研修プログラムを立案できる能力・新人看護職員の臨床実践能力を評価できる能力)を向上させるために、シミュレーション教育の手法は効果があるのかを検討するためにスコーピング・レビューを実施した。6つの文献データベースを用いて検索し、最終的に15文献が評価の対象となった。文献の評価には、Feyら(2015)のシミュレーションに関する研究論文の評価ルーブリックを用いた。その結果、臨床教育者、被教育者(学生、新人医療従事者)の双方のアウトカム評価より、シミュレーション教育には臨床教育者の教育能力を向上させる効果があることが明らかになった。その一方で、サンプルサイズが十分ではないことやアウトカム測定が心理社会的尺度による短期的なアウトカム評価が多いことが、研究デザインとしての課題であった。次に、レビューの結果、臨床教育者の教育能力を向上させるシミュレーション教育プログラムとして多く取り上げられていた、臨床教育者のスーパーヴィジョンのスキル向上を目指した動画教材の作成を行ったが、実地指導者への研修会での活用には至らず、プレテストの活用のみとなった。
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