研究課題/領域番号 |
15K20668
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
吉良 いずみ 大分大学, 医学部, 講師 (70508861)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 便秘症状 / 化学療法 / QOL |
研究実績の概要 |
本研究は、がん化学療法中の患者の便秘症状とQOLについて調査し、できるだけ自然に近い形で排便が行える様に、侵襲性が低く便秘症状の改善効果と安全性が確認された看護技術である温罨法技術によって、がん化学療法中の成人女性への便秘症状とQOLへの効果について検討するものである。 本年度は、第1段階として「目的①がん化学療法中の対象者の便秘症状とQOLの実態」と、「目的②効果測定の指標の抽出」について、がん化学療法中で便秘症状がある対象者へインタビュー調査を行った。 目的①については、以下の結果が得られた。便秘症状は、抗がん剤の使用前、直後、1週間後等で大きく変動していた。また、化学療法に使用する薬剤の影響や対症療法としての便秘薬等の使用により、便秘だけでなく下痢を併発することや、化学療法の実施回数や経過によって排便状態が変化していることが示唆された。QOLについては、化学療法の治療期間が長期にわたることから、治療効果を最優先に体調を管理することで外出などの社会的な行動が制限されるなど、身体的な影響だけでなく心理社会的なストレスが排便に影響していることが示唆された。また、長期的な治療が予測される中で、便秘薬を使用し続けなければならないことへの不安や、コントロールの状況によって便秘や下痢になることが課題になっていた。 目的②については、以下の結果が得られた。自覚的な便秘症状については、抗がん剤の使用前、直後、1週間後等で大きく変動することが予測された。そのため、継続的に便秘症状を測定できる尺度の使用と、客観的な排便状態測定のための数量データの必要性が示唆された。合わせて、化学療法の前後での一定期間の調査が必要であることも示唆された。QOLは、便秘症状に生活行動への影響だけでなく、心理社会的な側面からの効果測定指標や、便秘薬を選択することへの満足感についても測定する必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の進捗状況は、予定していた第一段階の「目的①がん化学療法中の対象者の便秘症状とQOLの実態と、②効果測定の指標の抽出」について概ね計画通り実施した。その結果、化学療法中の対象者の具体的な排便状況や日常生活への影響および、排便管理における課題も明らかになった。また、第2段階のプレテストで使用する介入効果の測定項目についても、測定項目と測定時期及び、測定期間の決定に繋がる重要な示唆を得ることができ、第2段階へとつながる結果を得ることができた。 本年度の研究費の使用については、当初予定していた海外への学会参加は行わず、国内の学会への参加及び発表を行った。また、物品費として計上していた予算について、インタビュー調査に必要な物品購入費の不足があり、未消費となった予算分を物品費に使用し、年度内の予定額は概ね研究費内で運用することができた。 以上のことから、全般的に研究は順調に進行していると判断した。尚、これらの結果については、論文執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、第2段階として、今年度の調査結果から得られた効果測定のための測定指標及び、がん化学療法中の対象者にとって最も効果があると考えられる看護ケアの介入時期について、プレテストを実施し、介入効果についての検討を進める予定である。また、本年度得られた結果については、学会発表及び論文執筆・投稿を行う予定である。 第2段階のプレテストについては、第1段階で研究協力を頂いた関連施設において、引き続き研究を進める予定であり、関係者との連携のもと計画通り研究を進めることができる。また、この施設のみでデータが収集できなかった場合に備えて、その他の候補となる研究施設も選定も行っている。 次年度の研究費には、プレテストで使用する物品費および、第1段階の結果に関する学会発表、情報収集及び、文献複写等の費用を計上している。現在までに概ね予定通り研究が進んでおり、当初の予算通りで予算の執行を行い、研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の1月に文献複写費として予算計上していた。担当部署より、使用2か月後の3月末に予算から自動で引き落とされるとのことで、該当金額の5,990円を残し、それ以外のすべての予算を使用した。 次年度に入り、事務方と財務担当部署および研究者の確認の行き違いで、すでに5990円は引き落とされていたことがわかり、結果として、5,990円が使われずに残高として残ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の文献複写費および図書費として使用する予定である。
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