本研究では、看護師のWLB実現に向けた看護師長の認識と役割を明らかにすることを目指し、「コンピテンシー」という概念に着目して研究を進めてきた。 平成27年度は、インタビュー調査から看護師のWLB実現に向けた看護管理者(看護師長、あるいはその役割を担う者)の認識と実践の実態を明らかにした。平成28年度は、インタビュー結果および文献から17コンピテンシーを抽出し、定義と構成要素を検討してコンピテンシーの構成概念を明確にした。さらに、看護師長289名の回答に基づいた分析(項目分析・因子分析)を経て、9因子41項目からなる看護師のWLB実現に向けた看護師長のコンピテンシー評価尺度を作成した。 平成29年度は、作成した尺度の信頼性・妥当性の検証、尺度の関連要因を明らかにすることを目的として、全国の病院の看護師長を対象に質問紙調査を行った。その結果、1743名の回答に基づいた分析(項目分析・因子分析)を経て、最終的に8因子38項目からなる尺度が構成された(因子名:ビジョンの共有、キャリア支援、個の能力を活かした運営管理、対人関係構築の基盤となる柔軟性、WLB支援制度の理解の推進、看護実践における問題解決行動、休暇取得の透明性・公平性確保、中間管理職としての責任ある行動)。 尺度の内的整合性を表すCronbachのα係数は、尺度全体および因子別で0.7以上を示し、信頼性が高い尺度であることが確認された。また、進学および研修や学会参加など、主体的に学習するといった自己研鑽につながる行動が取れている看護師長は、看護師のWLB実現に向けたコンピテンシーが高いことが示された。 尺度の実用化に向けて、基準関連妥当性や有用性を検証することが今後の課題である。
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