本研究はICEモデルを用いて、メタ認知を促進する教授方略を明らかにする。具体的には、看護学生のメタ認知を促進する好機となる学習支援が必要な事例を調査し、事例ごとに指導方法を明記したルーブリックを作成し、指導効果を評価する。 平成28年度に看護教員を対象に、看護学生に指導が必要だと判断した場面と、学習状況をどのようにアセスメントしたのか、その内容を明らかにした。平成29年度は、その結果をもとにICEモデルを枠組みとしたルーブリックを作成した。指導が必要であった実習場面の患者とコミュニケーションが図れていない、自ら進んで患者のところに行けない、患者に拒否されたり受け入れてもらえないときを設定し、目標を自ら学ぶ姿勢を持ち、患者とコミュニケーションを図ることができるとし、患者理解の要素についてICEルーブリックを作成した。また、ICEルーブリックを活用して実習指導を行ってもらい、「作成したルーブリックを使用した結果、メタ認知の促進において学生に生じた変化」について聞き取り調査を行った。その結果、ICEルーブリックを活用した発問は、学生の気づきを促し、リフレクションのきっかけとなっていた。学生に生じた変化としては、自分の行動とその理由について考えられていた、単なる経験ではなく深く思考できていた、との意見があった。また、この発問が学生に影響しているかわからない、行動の変化まで実習期間中に見届けることができないとの意見が上がった。発問はメタ認知的モニタリングを促すことに有効であり、実習中ではなく終了後の振り返りにも活用できると考えられる。しかし、学生の思考の段階に応じて細かく分けて行うなどの教員側の工夫や、繰り返しICEルーブリックを活用した継続的な指導が必要であることが示唆された。
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