本研究の目的は,専門看護師(以下CNS)のキャリア発達と就業継続を支える要因を定量的及び定性的に検討することである。 当該年度は,横断的質問紙調査と縦断的面接調査を実施した。横断的質問紙調査では,病院に勤務するCNSを対象に,職務特性と就業継続意向,コミットメントについて調査を実施した。病院に勤務するCNS 500名に調査票を配布し,調査票は228票回収され(回収率45.6%),このうち欠損の無い216票を分析対象とした(有効回答率94.7%)。分析の結果,情緒的コミットメントと「高度な専門性の獲得感」「上司・リーダーの支援」の間で正の相関が見られた。また,ロジスティック回帰分析の結果,高度な専門性の獲得感が高いほど,情緒的コミットメントが高いほど,功利的コミットメントが高いほど,福利厚生の満足度が高いほど,就業継続意向が高いことが明らかとなった。CNSの就業継続には,特に高度な専門性を獲得できる環境が重要であり,専門性を発揮できるフィールドの提供や,キャリアや能力に応じた院内研修や院外研修への参加,資格更新に必要な教育研修機会を提供する必要性が示唆された。 縦断的面接調査では,昨年度までに一度面接調査に参加したCNSのうち,3名に面接調査を実施した。面接調査の結果を帰納的に分析した結果,キャリア発達の促進要因として,「信頼できる上司・リーダーとの関係性の向上」「仕事上の成功」「配置換えに対する肯定的な認識」が抽出された。他方,阻害要因としては,組織と自己との関係の感覚としての「変化への葛藤」「方向性や目標の喪失」「余裕と時間の無さ」,否定的感情としての「漠然とした不安」「もどかしさ」などの心理状態が抽出された。新たな役割変化をどのように認識するかということはキャリア形成のプロセスの一つであり,その意味付けと受容・適応を促していくことの重要性が示唆された。
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