研究課題
本研究の第1の目的は,植込型補助人工心臓(Ventricular Assist Device, VAD)を装着する患者のセルフケアを評価する尺度を日本と欧州で共同開発し,その信頼性・妥当性を検証することである.本年度は,本セルフケア評価尺度の項目開発を行った.項目開発では,植込型VAD患者のセルフケアに関する系統的レビューによって56項目(例,I avoid bending, kinking, or twisting the driveline, I protect the LVAD from being wet, I contact the LVAD /heart failure team in case of alarms, I avoid cigarettes and tobacco smoke)が抽出された.次に,この56項目を慢性疾患患者のセルフケア理論(Riegel et al, 2012)に基づき,セルフケアメンテナンス,セルフケアモニタリング,セルフケアマネジメントの3カテゴリに分類した.その後,この56項目の重要性,妥当性,適切性,明確性等について,日本,スウェーデン,米国等の心不全を専門とする医師,看護師,看護系研究者らで検討した.その結果,19項目が削除および統合され,37項目が植込型VADセルフケア評価尺度の項目として抽出された.現在,この37項目の順翻訳(英語から日本語へ翻訳)を進めており,終了次第逆翻訳(日本語から英語への翻訳)を行う予定である.全ての過程で他国の研究者らと議論を重ね,内容の同等性が確保されるように配慮している.
3: やや遅れている
系統的レビューからの項目の抽出および抽出された項目の重要性,妥当性,適切性,明確性等を確認する作業に予定より時間を要したため.
来年度は,抽出された37つのセルフケア項目をもとに評価尺度を作成し,まず数名の植込型VAD患者を対象にパイロットテストを実施する.項目の過不足に加え,分かりにくい言葉がないか,回答が難しくないかなどを患者に尋ねるとともに,尺度の回答所要間も確認する予定である.その後,セルフケア評価尺度の妥当性・信頼性検証のための自記式質問紙調査を実施する予定である.また,作成した尺度の妥当性・信頼性が確認された後,本尺度を用いて,植込み型VAD患者のセルフケアに関連する因子を同定するとともに,セルフケアとVAD合併症・生命予後の関連性を明らかにする予定である.
セルフケア評価尺度の項目開発に予定より時間を要したため,尺度の順翻訳および逆翻訳の作業が遅れ,今年度に予定していた翻訳費を使用しなかったため.
本年度に予定していた尺度の翻訳作業の目的で,次年度に繰越分を利用させていただく予定である.
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Circulation Journal
巻: 79 ページ: 2186-92
doi: 10.1253/circj.CJ-15-0502