我々のこれまでの調査から、日本人糖尿病患者においては療養の達成のために環境を変えることより、同じ環境の中で自身の行動を調整する方法のほうが成功につながりやすいことが示唆された。そのような日本人糖尿病患者において有効な療養支援方法が有するべき要素について、栄養士、医師、看護師、心理学者による多面的検討会を実施したところ、日本人糖尿病患者の療養の達成度、糖尿病による制限の度合い、周囲からのサポート、幸福感などを含む心理的特徴をさらに深く調査する必要があると認識された。そこで、日本人糖尿病患者200名を対象として質問紙調査を実施した。この結果、68歳未満の比較的若い患者では、HbA1c、療養に関するサポートの程度、糖尿病による制限の程度が幸福感と有意に関連しており、68歳以上の比較的高齢の患者では、療養に関するサポートのみが幸福感と有意に関連していることを見出した。日本人糖尿病患者の療養の達成度を高め、幸福感を高めるための有効な介入戦略は、療養の具体的行動に関する具体的なサポートであり、かつ、療養のために従来の生活を制限することのないような配慮が必要であることを裏付ける結果と解釈できた。そこで、日本人糖尿病患者に有効な介入方法として、新たに、「生活環境焦点型療養支援介入法」を開発した。これは、まず、患者の生活環境を詳しく調査したうえで、環境に即した具体的療養法を支援する方法である。この手法を用いた介入研究によって有効性を実証する準備が整ったため、すみやかに実証研究を実施する。
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