研究課題/領域番号 |
15K20699
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
正垣 淳子 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (80725987)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性心不全 / セルフモニタリング / 症状体験 / 看護支援 |
研究実績の概要 |
本研究は、慢性心不全の急性増悪の予防と早期対処のために、急性増悪時の症状体験に働きかけ、回復期、慢性期のセルフケアにつなげるための急性期看護支援モデルを開発することを目的としている。27年度は、症状体験に働きかけるための急性期看護支援モデル作成のために、慢性心不全患者の急性増悪時の症状体験とそれに働きかける看護実践を明らかにするためのデータ収集と分析を行った。分析結果については、成果発表前のため、詳細は記載できないが、概要は次のとおりである。 急性期病院1施設において、慢性心不全の急性増悪によって集中治療室に緊急入院となった患者9名と、その患者の看護支援を実践した看護師11名を対象に、緊急入院後の会話が可能となった時期~集中治療室退室迄の期間に看護支援場面、診療場面の参加観察および参加観察後の半構造化インタビューを実施した。得られたデータは逐語化し、質的帰納的に分析を行った。慢性心不全の急性増悪時の患者の症状体験では、患者は、急性増悪時の症状の変化を詳細に記憶しており、症状が引き起こされた原因を自分自身で検討し、なんらかの対処を行っていたと語った。その後、病状が回復する中で患者は、自分のこれまでの経験、医療者からの働きかけや医療者の行動などの情報を基に、自分自身で症状の意味づけを行っていた。意味づけの過程で、症状の原因が曖昧でよく分からないと語る患者もいたが、そのことについて医療者へ自ら働きかけた者は認めなかった。看護師の患者への看護実践では、看護師は、常に患者に実施する看護支援の方法や観察した身体所見を説明しながら、看護支援を行っていた。それらは、患者の体験を引き出すことや意味づけるためにというよりも、説明責任や患者の安静を促す目的で実施されていた。 これらの結果より、症状体験に働きかけるための看護実践の適切な時期や方法、内容について検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度に予定していた「慢性心不全患者の急性増悪時の症状体験と看護実践」についての調査は、当初の予定どおりデータ収集を実施し、現在分析の最終段階である。27年度実施の調査は本研究の新たな知見の重要な仮説となる部分であるため、確実に分析を行い、次年度に実施予定の「慢性心不全患者の急性増悪時の症状体験に働きかけセルフモニタリングを強化する看護支援モデルの開発」につなげる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は、27年度に実施した「慢性心不全患者の急性増悪時の症状体験と看護実践」の調査の結果を基に、「慢性心不全患者の急性増悪時の症状体験に働きかけセルフモニタリングを強化する看護支援モデル(案)」を開発する。作成した看護支援モデル(案)は、事例を用いてシミュレーションを実施する。シミュレーションの様子の参加観察および、シミュレーション後のフォーカスグループインタビューを実施し、実施中の洞察および疑問点、欠損している要素を抽出して看護支援モデル(案)の修正を行う。 29年度は、修正した看護支援モデルを用いて、慢性心不全の急性増悪によって集中治療室に緊急入院となった患者40 名を対象に、<作成した看護支援モデル群>と<従来の看護支援群>の2群に分け、作成した看護支援モデルが慢性心不全患者のセルフモニタリングに与える効果の検証を行う。効果の検証には、「心不全患者セルフモニタリングの評価尺度(Hattori Y,et al,2011)」、「ヨーロッパ心不全セルフケア行動尺度日本語版(Kato N,et al,2008)」、心不全に関わる身体指標(NYHA 分類、BNP、体重の変化等)を用い、退院前、退院2週間後、退院4週間後の変化を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、27年度に実施した調査の分析最終段階であり、成果発表などに使用する旅費等を次年度使用額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
1)看護支援モデル(案)のシミュレーションに参加する看護師の交通費、2)データ整理のための研究補助の雇用(謝金)、3)27年度調査の研究成果発表のための国内旅費および論文投稿費、4)調査に関わる消耗品として、用紙およびパソコン関係の消耗品が必要となる。
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