本研究は、下肢リンパ浮腫患者を対象にした、リンパ浮腫および身体機能・精神的健康の改善に向けた運動プログラムの開発を行うことを目的とした。令和元年度は、運動プログラムの介入を行い、データ収集を行った。データは1名より得られ、3か月の介入前後で患側・健側ともに肢周径および筋肉量の変化はなかったが、筋力は患側の膝伸展で9.2kg、健側の膝伸展および膝屈曲でそれぞれ6.5kg、5.4kg増加した。QOLは身体的側面、精神的側面、役割/社会的側面のいずれのサマリースコアも上昇はみられなかったが、下位尺度である社会生活機能のスコアは上昇した。運動プログラムの所要時間は20分程度であったが、対象者はほぼ毎日運動プログラムを実施しており、運動の負荷として辛い、継続が難しいなどの反応はなかった。 本研究は運動プログラムを開発し、その効果を検証することを目的としていたが、介入研究の対象者数を十分に確保することができず、効果を検証するに至らなかった。しかし、下記の内容が明らかになった。 1. 文献レビューの結果、リンパ浮腫および身体機能・精神的健康の改善に効果を認めた運動の多くは、レジスタンス運動であった。その内容は、水中運動や自動抵抗運動であった。 2. リンパ浮腫の診療に関わる看護師、理学療法士と共に、運動プログラムの内容を検討し、座位や臥位で行える運動を中心に運動の種類を検討したことで、自宅で、対象者が一人で安全に実施できるプログラムを実現した。 3. 1名ではあるが介入を行ったことによって、継続的に実施できる運動プログラムであること、肢周径および筋肉量の変化はなかったが、筋力は増強しているため、運動プログラムを継続することで肢周径の改善につながる可能性が示唆された。
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