最終年度は前年度に引き続き、化学療法中の就労乳がん患者におけるセルフケア能力を明らかをすることを目的に、化学療法中に就労を継続していた乳がん患者を対象に半構造化面接を行った。 調査の結果、計12名の対象者からデータを得ることができ、化学療法中の就労乳がん患者のセルフケア能力として、治療や就労関する情報を探索する力、働き続ける意思を持つ力等の能力が明らかとなった。また、化学療法と就労を両立する過程において、出現した有害事象の増強や心理面の変化により、休職の決断や復職に向けて準備をするといった局面があり、両立する上で必要とされる能力も変容していることが示唆された。 文献検討や面接調査の結果から、化学療法中の乳がんサバイバーにおける就労との両立に向けた看護支援においては、自己の病状や治療を正しく認識し、化学療法に伴う就労を踏まえた日常生活への影響を捉えられるように、患者が得ている情報や認識の確認と、日常生活への影響を共に考えセルフケアを促していくことが必要であると考えられた。体調に応じた柔軟な働き方や就労環境の調整を行うためには、周囲の人々からの理解や協力が得られるように説明し対話していく力が不可欠である。そのため、調整事項や活用可能な社会資源を確認し生活調整を行うこと、職場との交渉を促進するための支援が必要である。治療や就労継続に伴うストレスや不安等の否定的な感情への対処、就労を継続する事への動機の維持に対する情緒的支援も重要であると考えられた。これらの研究結果は、今後関連学会で発表を行う予定である。 支援プログラムの検討にあたっては、治療の経過に応じたセルフケア能力を評価し支援を検討することが必要である。今後は、就労支援のニーズを判断できるアセスメントツールの開発や、化学療法中の就労乳がん患者の特性を踏まえたセルフケア能力を評価できる尺度の開発が課題であると考える。
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