がん患者の多く体験する苦痛症状の中で頻度が高く、予防や症状緩和のための方法が確立していない化学療法誘発性末梢神経障害に焦点を当てることとした。患者の体験世界とともにグッドプラクティスといえる症状に対する方略を収集することを目的とし、ヒアリング調査を行った。生活との関連、および症状への方略をより豊かに収集するために、外来通院により化学療法を受けている患者を対象とした。症状マネジメントモデル(Model of Symptom Management:MSM)を概念枠組みとし、半構成的面接法にて聴取した。化学療法認定看護師、外来化学療法室の看護師を共同研究者として研究班を組織した。また、がん看護および質的研究のエキスパートにスーパーバイズを受けて、信頼性と妥当性を担保した。 患者19名(男性7名、女性12名)にインタビューを行った結果、症状の程度は生活に支障を来たす有害事象Grade2~3が12名であり、主に手足に出現する異常感覚等の症状による日常生活動作への支障や、思うような行動ができないという体験をしていることが明らかとなった。グッドプラクティスは、マッサージや温める等の【症状を和らげる対処】、手袋や靴下等を用いた【症状を増強させる物理的刺激や寒冷刺激の回避】、代替となる道具や資源、機能の活用や積極的な気分転換といった【生活を円滑にする工夫】があった。対象者の半数が身体損傷を経験しており、二次傷害を回避するために手足に意識を向け、慎重に行動し、サンダルや靴下、手袋で手足の保護に努めていた。動けなくなることへの不安や恐怖が強い対象者は多く、階段昇降やスクワット等、独自で考えた積極的な運動方法を実践し、【体力や筋力の維持・増進】に取り組んでいることが分かった。
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