研究課題/領域番号 |
15K20714
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
由雄 緩子 兵庫県立大学, 看護学部, 助教 (60632461)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性棒看護 / 慢性呼吸器疾患 / 生活機能 / 評価尺度 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、文献検討と先行研究を基盤とした生活機能評価尺度の認知テストを行うこととし、1.先行研究から得られたデータより尺度の認知テストを行い、その修正と本調査のデータ収集をおおむね完成させる計画であった. 前年度に先行研究での成果を再検討し、発表したことにより、本研究が対象としている生活機能を評価することの重要性を確認したとともに、より効果的な尺度を作成するため、概念枠組みを整理、質問肢を丹念に洗練する必要性があるとわかった.そこで、尺度の認知テストを行う前に、文献検討に加え、先行研究では得られなかった対象への追加データ収集を行う必要があると判断し、データ収集を行い分析する段階である. 生活機能尺度の構造は、WHO(2002)の国際生活機能分類:国際機能分類改訂版(International Classification of Functioning Disability and Health, 以下ICF)を概念枠組みの前提としている.これを用いた本研究の先行研究では、患者の生活体験と比較、整理していく中で、身体の機能とは関係なく、参加の機能が維持、向上するパターンが得られた.生活機能の視点から得られたテーマは、症状や体験、生活の不自由さだけでなく、患者の工夫や生活を患者自身が構築していく可能性に目を向けることとなり、慢性呼吸不全患者の生活の実態を説明することが示された.より効果的な評価のために概念枠組みの確認および、質問肢の洗練を行うため、追加でデータ収集を行い、多様な患者の生活の実態を反映する尺度を構築し、その内容を確認している段階である. 本研究の目的である先行研究を基盤とした慢性呼吸不全患者の生活機能を可視化する尺度を精錬、完成に対し、より多様な患者の生活実態を含めた質問肢の検討を行い、認知テストおよび信頼性と妥当性の確認を進めている状況である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、本研究の中間年度であり、尺度の信頼性と妥当性の確認を行うデータ収集を予定していた.生活機能の評価にあたり、患者の療養生活環境を取り巻く課題への考慮、より効果的な評価のため、予定していた手順に加え、追加のデータ収集を行う必要があった.当初の計画より進行がやや遅れ気味であるが、対象が慢性期で整理すべき因子が多岐に渡る中で、先行研究を詳しく検討し、アプローチの異なる専門家の意見を聞いたことで追加のデータを得たことは、結果的には尺度の信頼性、妥当性を高めるためには不可欠なステップであった. 今後、本調査のデータ収集、分析を行うが、研究者は、本研究の前段階の研究で慢性呼吸不全患者より、複数回のべ50名よりデータを収集した実績があり、対象者の選定など専門機関の紹介のもとに実施する予定であり問題ない.よって、今後、速やかに本研究をすすめる必要があるが、尺度はより患者の生活実態に焦点を当てて構造化されてきており、患者の実態に即した看護支援を提供するための方法を見出すため、多様な患者の生活の実態を反映する尺度が修正され、これらを確認する段階である.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、1. 認知テスト(期間:平成28年12月~平成29年9月)の分析、3.信頼性と妥当性を確認するためのデータ収集と分析(期間:平成29年5月~平成30年1月)の予定で進める計画である. 1.尺度の認知テストを行う.前段階の研究で開発された慢性呼吸器疾患患者の生活機能尺度の患者と専門家による認知テストを行う.(1)慢性呼吸器疾患の専門病院に勤務する看護師約5~6名に生活機能尺度の質問肢の認知を聞き取り調査にて確認する.(2)慢性呼吸不全患者に質問肢の認知を聞きとりにて約5~6名に確認する.いずれも複数施設にて行う.これらの結果により、尺度の修正を行う. 2.信頼性と妥当性に関する検討と修正は、研究協力に同意の得られた約150名程度として、質問肢に回答してもらう.研究対象者は、閉塞性の病態を伴う慢性呼吸器疾患患者の中で、生活機能尺度を調査する研究内容について書面により研究に協力することに同意が得られた方として、分析に十分な対象を得る.信頼性の確認のために50名程度のテスト-再テストを行う.その後、ラッシュ分析を用いて妥当性及び相関性に関する分析を行う.結果に基づき、質問肢を改善する. これらの研究の分析は、専門家のスーパーバイズを受けながら進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、研究実施計画の生活機能の評価尺度において、質問肢の洗練を行うために、適した環境でのデータ収集の準備を段階的に追って進めていった.そのため、広くデータ収集が必要となり、そのための旅費や謝金等の費用を残しておく必要があった.また、本研究は、ICFや呼吸器疾患、慢性看護の専門家にスーパーバイズを受けながら進めているが、そのためには海外渡航などの準備を要し、充分な時間を確保するためには計画的に訪問する必要があった.このことにより、渡航のための旅費や謝金を確保しておく必要があったために次年度に必要額が生じた.これらは研究を進めていくためには必須の経費であり、分析や結果を精錬する段階で使用していく予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
データ収集において、本研究の対象者は、専門医療機関による管理が中心である.対象者の選定もこれらの専門医療機関からの紹介を中心に実施することから、十分な研究対象者を得るためには全国規模で実施する必要があり旅費が必要である.インタビューで得られた音声データの文字変換作業が必要となるが、研究を効率的に進めるために作業は外部発注をすることからこの作業費が必要となる.さらに、生活機能の評価尺度に対する認知テスト(期間:平成28年12月~平成29年9月)の分析には、海外の講師との会議のための通信費、謝金等が必要になる. 以上のような研究過程を踏むにあたり、研究に関する解析ソフトや資料にかかる経費、書類等の印刷費、データ保管整理用のファイルや分析段階に必要な文具類、郵送費等の消耗品の費用として使用予定である.
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