本研究は、新人手術室看護師(以下、新人看護師)が周手術期患者の安全を守るために必要となるフィジカルアセスメント能力を、効率よく効果的に学習できる教材および学習支援システムの開発を目的とするものである。 平成27年度は、新人看護師およびその教育に関する現状とニーズについて調査した。調査により得られた現状とニーズを分析し、手術室看護師のフィジカルアセスメント能力が求められる術中体位固定に関する教材を作成した。また、新人看護師が臨床場面をイメージしながら学習できるように、実際の術中体位固定におけるフィジカルアセスメント事例を参考に、教材シナリオを作成した。教材シナリオをもとにストーリーが進行すると、状況に合わせた設問が出題され、その設問に答えながらフィジカルアセスメントや臨床判断を学習でき、解答に対して即時フィードバックを得られる構成とした。さらに、新人看護師がいつでもどこでも簡便に学習できるように、Learning Management System(以下、LMS)であるmoodleを用いたeラーニング教材として設計し、教育担当看護師が新人看護師の学習状況をLMS上で管理できるシステムとした。 平成28・29年度は、同様の手法で、術前の呼吸器系・循環器系機能評価の場面に必要なフィジカルアセスメントを学習できる教材を追加した。作成した教材や学習支援システムに関して、視覚性、操作性、教材内設問の質・量・難易度、臨床での活用可能性の観点から、新人看護師と教育担当看護師双方に調査をした。調査の結果、設問の質・量・難易度、視覚性に関する満足度が高いことが明らかとなった。また、学習機会を増やすことに貢献する一方、学習意欲維持のためには、教材場面の種類を増やしていく必要性が示唆された。さらに、本教材の活用により、統一した内容の学習が可能となり、教育に要する負担軽減にも貢献する可能性が示唆された。
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