炎症性腸疾患患者の治療法に関する意思決定支援モデルを構築することを目的に、第一段階として、寛解期にある患者を対象に半構造化面接を行い、得られたデータを質的帰納的に分析し、患者の治療選択に関する意思決定プロセスを明らかにした。患者の意思決定プロセスの中心は【症状軽減を狙った賭けに出るか否か】であり、これは症状による生活への支障、治療の選択・決定に臨む姿勢、情報・経験の模索、天秤にかける、決断という5段階から構成された。 最終年度は、本研究の第二段階として、炎症性腸疾患患者の看護実践に携わる看護師6名を対象に、患者への意思決定支援に関する体験や考えについて面接調査を行った。面接内容から逐語録を作成し、参加者が患者への意思決定支援について述べている部分を意味のまとまりごとに抽出し、コード化した。コード化した支援内容の類似性と差異性を検討しながら、内容の類似するコードをまとめてカテゴリー化した。結果、《意思決定に向けた学習支援》《患者と医療者の仲立ち支援》《価値観の引き出し支援》《共に意思決定を創る支援》という4つのカテゴリーが見出された。 その後、第一段階の患者への面接調査結果と、第二段階の看護師への面接調査結果とを照らし合わせ、不足している支援や修正が必要な支援がないかを検討しながら、支援モデル原案を作成した。この原案について、IBD看護に精通した専門家より意見を求め、それらを反映しながら支援モデルを精錬し、最終的に患者の意思決定プロセスに応じて上記の4つの支援の重きを変えて関わる支援モデルを確立した。
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