本研究の目的は,母親の自覚する母乳育児確立の概念や構成を明確にし,それを評価するためのアセスメントツールを作成,検証することである。方法は次の3段階である。まず母乳育児を継続している母親を対象に半構成的インタビューを行い,質的帰納的に母乳育児確立の段階を明らかにする。次にその結果をもとに質問項目を作成し,母親の自覚に基づく母乳育児確立のアセスメントツールを作成する。最後に,作成したアセスメントツールの信頼性・妥当性を検証する。 しかし文献検討の結果から調査実施前に,わが国における母乳育児確立の概念を明確にしておく必要があると考え,Rodgersの手法を用いて分析を行った。その結果,先行要件として【母の身体的要件】,【母の心理的要件】,【母の学習要件】と【児の身体的要件】,【母子の環境要件】の5つのカテゴリーを,属性として【母乳分泌量が児の必要量に達している】,【母乳栄養で児の体重増加が順調である】,【母乳育児を継続している】,【母乳育児に自信がある】の4つのカテゴリーを,代用語として【調査時の母乳率が高い】,【完全母乳率】,【調査時の栄養方法が母乳である】の3つのカテゴリーを抽出した。このことから,わが国における母乳育児確立を「直接授乳ができ,母乳栄養で児の体重増加が良好であること。また母親が自信をもって母乳育児を継続していること(混合栄養を含む)。」と定義した。考察から,医療者と母親の間には母乳育児確立の認識に違いがある可能性が考えられ,本研究の必要性が示唆される結果となった。 次に,生後4か月から6か月までの乳児を持つ母乳育児を継続している母親17名を対象に半構成的インタビューを実施した。母乳育児をやっていけると感じた場面について,母親の感覚や自覚した内容を,可能な限り詳しく聞き取った。現在分析中であるが,調査結果をアセスメントツール作成につなげていく予定である。
|