【目的】H28年度の調査結果から、経会陰超音波法を用いて骨盤底筋の圧痛点を評価するには、その部位を超音波画像に描出する点での課題がまだまだ多いことが分かった。しかし、慢性骨盤痛症候群では、骨盤底筋の過緊張により骨盤周辺に疼痛が持続的に生じることが知られており、そのような患者に指を膣に挿入するなどでの圧痛点評価をすることは侵襲性が高い。非侵襲に実施できる経会陰超音波法はメリットがあると考えられる。経会陰超音波法での描出手技の工夫や画像解析等を用いて評価指標の開発に取り組んだ。 【方法】健常女性と、慢性骨盤痛を有する女性において、超音波画像診断装置により骨盤内臓器(膀胱・子宮・直腸)およびその周辺を疼痛を引き起こさないで描出する方法を開発した。また、疼痛部位について形態的な違いの検討の他、カラードプラ法やエラストグラフィーなどを用いて違いを検討した。 【結果】体位を側臥位にすること、膝の間にクッションを挟むこと、膣周辺に十分なエコーゼリーをつけ強く押さなくてもプローブと会陰部を密着させることで、慢性骨盤痛女性でも疼痛がない方法で骨盤内を適切に描出できることが確認された。しかし、健常女性と、慢性骨盤痛を有する女性の間で、形態的な違いの検討の他、カラードプラ法やエラストグラフィーについて違いはなかった。 【考察】このたび、慢性骨盤痛を有する女性に対して、2Dエコーを用いて骨盤内を観察したが、圧痛点評価になりえる指標を見出すことができなかった。これは、女性の苦痛を最小限にするために、疼痛が比較的軽く調査施設までの移動が可能な時に調査したことが関係している可能性があり、同じ慢性骨盤痛を有する女性においても、症状の程度によって骨盤内臓器およびその周辺の状態が変化する可能性がある。今後は、同一の慢性骨盤痛を有する女性の中で症状のサイクルに合わせた縦断調査や、重度症例での調査を行う必要がある。
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