知的障害を持つ人々の高齢化によって知的障害者の人口は増加し、その主要なケア提供者である親の高齢化も大きな問題となっている。今後、知的障害者やその高齢の親が訪問看護や老人保健施設などを利用し、医療ケアを利用する機会は増加してくることが予想される。知的障害者とともに生活する親は、障害がない子どもと生活する親にくらべ、子どもとの結びつきが強く、子が成人してからも意思決定を担うなど、独特で濃密な親子関係が築かれることが多いため、医療者がケアを提供する際は、一般的な親子関係にある親を想定した関わりではなく、その独特な養育経験を理解した関わりが必要となってくる。本研究は在宅で長期間にわたり知的障害者を養育してきた高齢期にある親の経験を記述することを目的とした。 文献検討と知的障害者を育てた親へのインタビュー調査を行った。2つの文献検討により、本邦の知的障害者とその主要な介護者である親を取り巻く課題や支援状況をまとめ発信した。成人の知的障害者のケアは親の高齢化による養育力の低下や、親離れ子離れの難しさ、親なき後の成人知的障害者の生活の場の在り方などが課題となっていた。 インタビュー調査では、16名の親への面接から、親たちは自分が育てられなくなったときや子の健康状態の悪化で施設にいられなくなることを不安に思う一方で、仲間とのつながりや子育てを長く経験できたことを知的障害者を育てたことによって得られた貴重なものととらえていたことが明らかとなった。
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