頸肩部への負荷を伴う育児動作について、文献検討により日常的に実施頻度の高い”抱っこ”動作が抽出された。この動作について、被験者15名に対し、通常撮影による動作の詳細解析と僧帽筋の筋活動について観察を行った。 筋活動については、児の抱き上げおよび降ろす動作時に筋電図振幅の増大がみられ、保持動作時に振幅の変化は見られなかった。また、抱っこの動作には、2名の被験者において児の保持姿勢に特徴が見られたが、被験者間で振幅変化の特徴に違いは見られなかった。従って、”抱っこ”の動作には、児の抱き上げおよび降ろす動作時に、僧帽筋の直接的な作用が伴う事が明らかとなった。 さらに、この動作を繰り返すことによる僧帽筋への影響について、筋電位トポグラフィを用いて観察した。動作負荷に伴う特異的な筋活動が観察され、これは動作負荷に伴う筋緊張の持続であることが考えられた。これらの筋活動は、頸肩部の自覚症状の位置と近似していた。また、筋電位トポグラムは経時的変化から、4つのパターンに分類された。パターン1として、動作負荷後に特異的筋活動が出現し、回復期には消失する。パターン2として、動作負荷後に出現した特異的筋活動は、回復期においても持続する。パターン3として、動作負荷前から、特異的筋活動が存在しており、負荷後には筋活動の位置を変化させながら回復期にも持続する。パターン4として、特異的筋活動は出現しない、であった。このことから、抱っこ動作を日常的に繰り返すことにより、頸肩部には筋緊張が持続しやすい状態となり、肩こりへのリスクにとつながることが考えられた。また、個々においてその程度は異なることから、筋電位トポグラムで表現することにより、個々の実情に最も適した介入法を見出す事ができると考えられた。
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