平成30年度は、共同して研究を実施している厚生労働科学研究費研究班とともに、患者会が実施した会員対象の質問紙調査の分析を行った。18歳から65歳の先天性心疾患患者371名について分析した結果、299名(61%)が就労していること、就労者のうち、一般枠と障害者雇用枠での採用者がほぼ同数であることが示された。一方で、職場で上司や同僚に自身の疾患について説明している者は、障害者枠での採用者においても3~5割程度に限られることが示された。これらの結果から、障害者雇用枠で採用されていても一般枠と変わらない業務に従事している患者がいる可能性、病状を理解したうえで職場に適切に病気に関する説明をし必要な配慮を得る方法に関する研究の必要性が示唆された。 さらに、厚生労働科学研究費研究班と合同で、従業員50名以上の企業採用担当者3354名を対象とした質問紙調査を行った。質問紙では、先天性心疾患と小児がん患者の2事例を提示し、各疾患の認知度、雇用可能性などについて尋ねた。質問紙に回答した1113名のうち、先天性心疾患を「知らない」と回答した者は272名(24%)、「名前だけ知っている」57%であり、小児がんの各8%、73%に比べて、認知度が低い結果であった。雇用可能性については、正規社員(障害者枠)で雇用可能と回答したものが300名(27%)であり、正規社員(一般枠)で雇用可能と回答した234名(21%)に比べて低かった。雇用にあたり知りたいこととして最も多くの対象者が選択したのは「どのような配慮が必要か」806名(72%)であった。この結果から、先天性心疾患の認知度は低く、病状、必要な配慮については患者本人や家族、医療者からの説明が不可欠であること、障害者手帳の取得が重要であることが改めて示唆された。
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