研究課題/領域番号 |
15K20742
|
研究機関 | 沖縄県立看護大学 |
研究代表者 |
上原 和代 沖縄県立看護大学, 看護学部, 准教授 (70406239)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 退院準備性 / 親 / NICU / 尺度開発 |
研究実績の概要 |
【目的】Weiss(2008)が開発した療養中の子どもの親用退院準備性尺度の日本語版(JRHDS-PF)を作成し、信頼性と妥当性を検討した。【方法】退院前1週と退院後1週、1か月の質問紙調査。研究参加者は沖縄県内4施設のNICUから退院する乳児の親。調査期間は2014年8月~。調査票は移行理論に基づき作成し、退院前にJRHDS-PF、退院後にKenner(1994)の退院後の親の心配と挑戦尺度(Transition Questionnaire)の日本語版(JTQ)を含めた。両尺度の開発者から翻訳と使用の許諾、所属機関及び調査施設の倫理審査委員会から承認を得た。【結果】調査票は165部配布し、退院前108人(65.5%)、退院後1週61人(37.0%)、退院後1か月44人(26.7%)から有効回答を得た。参加者は、年齢31.9歳(19-53,SD 5.83)、母親105人 (97.2%)、初産53人(50.5%)。乳児は出生体重2030g(594-4135,SD748.8)、出生週数33.9週(23-41,SD4.1)、入院日数40.7日(7-183,SD33.4)、半数は退院後も医療的ケアが必要であった。JRHDS-PFの項目毎回答率は9割以上、総得点の平均値は216.9点(140-284,SD31.3)で正規分布した。JRHDS-PFは原版より一つ少ない4因子構造で最も適切なモデルとなり、内部一貫性が高かった(Cronbachα=.90)。退院準備あり群、経産婦群、育児指導満足群、育児技術習得群、ケア参加十分群、退院調整十分群は、各対照群に比べ、JRHDS-PF総得点が有意に高く、構成概念妥当性が確認された。JRHDS-PF高得点群は低得点群よりJTQ得点が有意に高く、基準関連妥当性が確認された。退院後の予定外受診・再入院の有無でJRHDS-PF総得点に有意差はなく、予測的妥当性は確認されなかった。なお、JTQの信頼性は内部一貫性と再テスト法で事前に確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一段階で予定していた県内NICUにおける調査を予定通り完了した。国内の新生児看護の第一人者を招聘し、調査結果について意見交換し、JRHDS-PFの有用性を確認した(2015年10月)。結果の一部は第25回日本新生児看護学会において発表し(口演)、県外の新生児看護に携わる臨床家や管理者から意見を得た(2015年10月)。以上をふまえた調査結果は博士論文にまとめ提出した(2016年3月)。またバンクーバーで開催される新生児看護師国際会議のポスタープレゼンテーションへ登録し承認された(2016年3月)、発表は2016年8月に予定している。
|
今後の研究の推進方策 |
結果からJRHDS-PF はNICUから退院する乳児の親の退院準備性を測るのに有用な尺度であることが明らかになった。しかし、本研究は沖縄県という日本の一地域で行ったもので参加者数は100余名と限られ、調査期間が退院後1か月までという限界があった。日本語版としての信頼性と妥当性を高めるには、日本の標準値を得るべく沖縄県以外の複数の地域においてもデータを集積する必要がある。本尺度をNICUから退院する親子の準備性に応じた支援計画や退院の設定、ケアのアウトカム評価に役立つものとするためにも、日本語版の標準化が先決である。 以上より、第二段階(2016-7年度)の調査は小児病棟へ調査範囲を広げるという当初の計画から変更し、NICUから退院する乳児の親を引き続き参加として、調査場所を日本の複数地域へ拡大することとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
調査開始が予定より早まりデータ入力にかかった費用の一部を自己負担したため、人件費および謝金の27年度の支出額が計画していた経費よりも少なくなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
2017年度に予定している国際会議の会期が日本のお盆と重なっており(8月14-17日)予定していた経費よりも渡航費、宿泊費が多くかかる。2016年度からの繰り越しは、その不足分に充てる。
|
備考 |
(成果発表)上原和代、日本語版親用退院準備性尺度(Japanese Readiness for Hospital Discharge Scale - Parent Form)の信頼性と妥当性、沖縄県立看護大学大学院保健看護研究科、博士後期課程、学位論文、2017年3月、0-130頁
|