研究課題/領域番号 |
15K20742
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研究機関 | 沖縄県立看護大学 |
研究代表者 |
上原 和代 沖縄県立看護大学, 看護学部, 准教授 (70406239)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 退院準備性 / NICU / 親 / 日本語版 / 尺度開発 / 沖縄 |
研究実績の概要 |
主研究者は、Weiss(2007)が米国で開発した、療養中の子どもの親用退院準備性尺度(Readiness of Hospital Discharge Scale-Parent Form:RHDS-PF)の日本語版(JRHDS-PF)の試案を作成し、沖縄県のNICUから退院する乳児の親において因子構造を確認した。当初計画では、RHDS-PFの本来の調査対象に準じて小児病棟から退院する小児の親へ対象を拡大する予定であったが、本期間においてはNICUから退院する乳児の親の参加者数を増やして日本語版での因子構造を確認することとした。 平成27年度調査における調査施設は沖縄県にありNICUを有する総合周産期医療施設および地域周産期医療施設で、県内NICU病床の2/3を占めた。調査参加者は165人、有効回答数108(65.5%)。参加者の属性は、母親105人(97.2%)、既婚者103人(95.4%)、初産53人(50.5%)、核家族92人(85.2%)、平均年齢31.9歳(19-53,SD5.8)であった。子どもの属性は、平均出生体重2030g(594-4135,SD748.8)、平均出生週数33.9週(23-41,SD4.1)、平均入院日数40.7日(7-183,SD33.4)、退院後も医療的ケアが必要なのは56人(51.9%)であった。JRHDS-PFの平均値は216.9点(140-284,SD31.3)で、〈親の個人的状態〉〈育児の知識とスキル〉〈子どもの個人的状態〉〈期待される支援〉の4因子から成り原版より1つ少ない因子構造で、内部一貫性が高いことがわかった(クロンバックα=.90)。 沖縄調査において、JRHDS-PFの内部一貫性と構成概念妥当性および基準関連妥当性は確認できたが、臨床的意義の大きい予測妥当性は証明されていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度より3か年で日本の複数地域にあるNICUの協力を得て、JRHDS-PFの標準化を完了させる予定であったが、助成期間(3年)終了時点で全国調査のデータ収集が済んだところである。 本尺度の基準関連妥当性の検討に用いたTransition Questionnaire(Kenner,1994)は、沖縄調査の後、Transition-to-Home(Boykova,Kenner,2016)に改訂された。主研究者はTransition-to-Homeを作成者らの許可を得て翻訳し、NICUから退院した乳児の親の会の参加者(母親ら)とNICU看護の専門家の協力を得て予備調査を行い、日本語訳Transition-to-Homeを作成し、全国調査に用いる調査票を更新した。なお、日本語訳Transition-to-Homeの作成過程は主研究者の所属施設の紀要へ投稿した(上原,前田,2018)。 全国調査では沖縄に加え、関東と関西にある総合周産期医療施設、各1施設ずつの協力を得て、データ収集を完了した(2018年3月)。
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今後の研究の推進方策 |
本尺度の標準化の分析過程では、カットオフ値を決定し、それが臨床的にも有用であることを証明する必要がある。推進方策として、継続して研究資金を得られるよう、科研費他へ応募した。 分析方法としては退院後のトラブルのなかった移行群と非移行群を分けるJRHDS-PF得点(カットオフ値)をROC曲線で求めたい。群分けのため、施設の研究協力者である小児看護専門看護師と協力して、事例ごとに退院後の状況を分類する。また、結果を共有し、事例の群分けと尺度得点の解釈について意見交換する。分析手法と結果については、尺度開発の専門家からスーパーバイズを受ける。なお、JRHDS-PFは退院前調査に含まれ、回収率は7割、210部(2014年沖縄調査と合わせ300部)を見込んでいる。進行中の調査は必要に応じて診療録等を閲覧することの同意を参加者より得ており、協力施設及び筆者の所属施設の研究倫理審査委員会により承認済である。結果は、第10回国際新生児看護学会(2019年、オークランド)で報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
JRHDS-PFの基準関連妥当性に使用したTransition Questionnaireが、Transition-to-Home(Boykova,Kenner,2016)へ改訂された。主研究者らは、Transition-to-Homeの作成者らから許可を得て日本語へ翻訳し、全国調査の前に予備調査を行った。そのため、当初計画より半年ほど遅れが生じ、データ分析にかかる費用が残となった。平成29年度末終了予定を1年延長し、残額を分析費用に使用する予定である。
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