2018年度は2017年度に続き、調査結果の分析を行った。2017年度までに明らかにした、乳幼児を育てる共働き夫婦の育児の協働の構成因子を用いて、高協働群、低協働群を抽出し、協働の高低の違いで、どのような子育て行動の特徴があるのかを明らかにすることを試みた。低協働群は高協働群に比べて、夫婦間の年収の差が大きかった。労働時間や週あたりの勤務日数に差は認められなかったが、低協働群の方が、仕事と育児を夫婦で分業している可能性が推察された。子どもが病気時の職場の理解、親役割肯定感、平等的性別役割意識、親子関係、の4項目で高協働群の方が得点が高く良い状態にあることがわかった。親役割肯定感は、夫婦とも高協働群が肯定的であり、親子関係は、妻群は協働の高低で差は見られなかったが、夫群は高協働群が低協働群に比べて良好であった。平等的性別役割意識は、妻は協働の高低で差が見られなかったが、夫は高協働群の方が平等的な意識が高かった。協働のためには、夫の平等的性別役割意識の向上を促す必要があると考えられた。共働き夫婦の育児の協働の構成因子に基づいて高・低協働群を抽出し、実際の子育て行動の実施状況を比較した結果、高協働群の方が低協働群よりも夫婦間の分担の偏りは少なかった。低協働群は夫婦の協働が低いために、夫婦間の育児行動の分担は差が大きく、妻は夫の2倍を超える得点差で多くを実施していた。このことから、夫婦の育児の協働は実際の子育て行動の分担状況に影響することが推察され、協働の促進が重要であることが示唆された。特に、共働きを開始する前の生活とは大きく違う生活環境を想定して、夫婦で事前に十分な話し合いを行い、起こりうる様々な事柄を想定して対応策を考える機会を提供し、社会資源等に関する情報提供や相談といった支援策の構築は喫急の課題である。
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