本研究の目的は、乳幼児期の重症心身障害児(以下、重障児)の睡眠習慣と睡眠・覚醒行動の周期性を明らかにすることである。児童発達支援センター(通園施設)に通う2~6歳の肢体不自由の状態にある重障児5名と同年代の定型発達児5名を対象とし、活動量計を対象児の自発運動が認められる部位(腰部、上腕など)の衣服に、入浴、更衣等の時間を除いて装着し、14日間連続で活動量の記録を行った。測定は6か月おきに計3回、1年間行い、就床時刻、入眠時刻、覚醒時刻、離床時刻、睡眠時間、睡眠潜時、中途覚醒時間、中途覚醒回数、覚醒持続時間、周期性の特徴と加齢による変化を調べた。測定の結果、重障児の睡眠潜時は定型発達児より有意に長く、粗大運動能力と睡眠時間に有意な負の相関を認めた。一方、重障児の睡眠・覚醒行動は定型発達児と同じ24時間周期を示し、睡眠習慣、周期性ともに加齢に伴う有意な差異を認めなかった。重障児では2歳で既に安定した24時間の睡眠・覚醒リズムを獲得していたが、睡眠指標は標準偏差が大きく、睡眠潜時や睡眠時間といった睡眠の質に関わる部分において定型発達児と差が見られた。新生児期や乳児期では、脳の障害部位と関連する中枢神経活動の特異性や麻痺による身体活動の低下といった個別的要因が、より顕著に睡眠の質や睡眠・覚醒リズムの獲得に影響を与えると考えられる。今後、倫理的配慮に留意しながら、より低年齢の重障児の睡眠・覚醒行動と周期性を調査する必要がある。
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