研究実績の概要 |
発達障害児は、その特性から問題行動が顕著になることも多く、その養育者は、育児負担から、精神的健康度が低下することも少なくない。他方、養育者の多くは、良好に発達障害児の育児に適応している。本研究は、養育者の適応力を高める要因を明らかにすることを目的とした。
発達障害児をもつ養育者の適応力を向上させる要因を検討するために、地域や家族のサポートの状況を把握する質問票を作成した。発達障害の外来を受診する母親を対象として、その質問票と養育レジリエンス要素質問票(Parenting Resilience Elements Questionnaire: PREQ)を用いて、調査を実施した。300名以上のデータを得ることができた。養育レジリエンスに、地域や家族のサポートが与える影響を検討した。また、注意欠如・多動性障害に対する短期治療プログラムである、くるめSummer Treatment Program (STP)の参加児の養育者に対して、調査を昨年度から行っている。その結果をまとめ、STP参加前後を比較すると、STP参加前よりも参加後に、養育者のPREQ得点が高いことを明らかにした。すなわち、子どもを対象とした治療であっても、養育者に対して、好ましい効果があることが示唆された。さらに、ウェアラブル脳波計を用いて、発達障害児の神経科学的評価の可能性について検討した。
これまで得られた成果をまとめ、PREQと他の既存の質問票との関係性を明らかにした(鈴木,稲垣,2017, 精神保健研究)。そこで、養育者の適応力を向上させる要因について考察した。「子どもに関する知識」、「社会的支援」、「肯定的な捉え方」を養育者がもつことが重要であると提言し、この要素の充実には、地域や家族が関わることを想定した。
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