「自宅で最期を迎えたい」を可能にするアドバンスケアプランニング判断指標の開発

2016 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 15K20758
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 川本 祐子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 助教 (70527027)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: アドバンスケアプランニング / 在宅療養移行 / 療養環境選択

研究実績の概要

平成28年度は、平成27年度に引き続き文献研究を実施した。在宅療養・在宅看取りに影響を与える諸因子ならびに患者・家族・医療福祉従事者が直面しうる療養環境選択や在宅看取りに関わる意思決定の諸局面を抽出した。文献研究で得られた知見は、本研究で開発する判断指標の根幹をなすものであり、非常に重要である。
文献研究では得られなかった知見を補う方策として、自宅環境が疾病進行に影響を及ぼす事例を面接調査で集積し、自宅療養を望みつつも不安と困難を抱える患者および家族の実態の明確化に取り組んだ（面接調査は平成29年度まで継続予定）。在宅療養・在宅看取りを望む患者・家族にとって環境要因を取り除くことは重要である。この面接調査によって得られた知見は、医療福祉従事者が行う環境調整の方向性を検討する際の有用な判断材料となりうる。
さらに、学会やセミナー等への参加を通じて専門家から助言を得る機会があったことにより、本研究で開発する判断指標の構造を具体化する糸口が得られた。本研究の最終成果物の適用対象は多様性と複雑性を持つ患者・家族・医療福祉従事者であり、こうした対象に導入する上で参考になる理論や概念枠組みを見出すことができたことは非常に大きな成果である。一方で、当初の計画には予定していなかった追加調査の必要性（退院支援に関する既存の判断指標の活用状況に関する実態把握等）も示唆されたため、平成29年度での実施を検討している。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成27年度の進捗の遅れが平成28年度に影響を及ぼしたが、徐々にその遅れは縮小されている。
当初の計画を随時改善・修正しながら遂行しているが、平成27年度～平成28年度にかけて生じた進捗の遅れに加え、次年度に追加調査が必要となれば、進捗の遅れが拡大する可能性がある。

今後の研究の推進方策

平成28年度に見いだされた新たな研究上の課題（本研究における判断指標の開発において退院支援に関する既存の判断指標の活用状況に関する実態把握）については、追加調査の必要性を費用や所要時間を含めて十分に考慮したうえで着手する。また、本研究における判断指標の開発に際して大いに参考になる理論や概念枠組みについては、その内容や背景、適用範囲、限界などをよく吟味し、導入を検討する。

次年度使用額が生じた理由

使用計画には研究補助者の雇用を想定して人件費を計上していたが、初年度および当該年度にいたるまで条件に合う人材が得られず、雇用に至らなかった。また、専門家からの指導助言等への謝金を計上していたが、謝金を必要としない形（学会やセミナー参加等）で専門家から直接助言を得ることができた。そのため、当初の計画よりも人件費・謝金での支出を抑えることができた。
専門家訪問費用を旅費として計上していたが、前述のとおり訪問を要しない状況となったため、当初の計画よりも旅費を抑えることができた。
文献複写・取り寄せ費用をその他として計上していたが、研究者所属機関の図書館の取り決めにより助成金での支出が認められなかった。さらに、当初の計画では、当該年度に文献研究の成果発表を行う予定であったが、進捗の遅れにより次年度以降に行うことになったため、その他としての支出が当初の計画よりも抑えられている。

次年度使用額の使用計画

研究補助者を短期雇用する目途が立ち、次年度以降は一部の作業を研究補助者に依頼するため、人件費の支出が見込まれる。また、次年度以降に、初年度から当該年度に実施した文献研究や面接調査の成果発表を予定しているため、旅費およびその他の支出の増加をす想定している。研究遂行過程で生じた課題解決のため、次年度に追加調査を検討しており、その費用の支出が生じる可能性がある。