研究課題/領域番号 |
15K20759
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
青木 頼子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (40533477)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 意思決定支援 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、高齢者本人と家族の意向を尊重した療養場所選択のための意思決定支援ガイドの開発を行うことである。本年度は、高齢者本人と家族の療養場所選択の意思決定の特徴を明らかにするため、文献検討を行い、高齢者の尊厳の定義と意思決定支援ガイドの根幹である「情報」と「価値観」についてのガイド案を作成した。 高齢者の療養場所選択の意思決定場面では、高齢者本人の意向が尊重されず、家族と医療者間で療養先が決定している現状であった。そのため、まずは、「高齢者の尊厳」の定義を明らかにするため、CINAHL、MEDLINE、PsycINFO、SocINDEX、医中誌 web ver.5の5つのデータベースを用いてRodgersの概念分析を行った。その結果、高齢者の尊厳を「個人の高齢者像を基盤に、人としての待遇を受けることにより、自己と他者を尊重する関係性が形成され、自分らしく生きることへの肯定に繋がるプロセス」と定義することができた。 さらに、高齢者本人の代わりに家族の希望する退院準備、退院後の生活を見据えた社会資源の紹介などが優先されていた。しかし高齢者本人と家族には、退院後の生活についてのイメージ、疾患や障害に関する認識、家族に対する思い、介護保険や社会資源の利用に対するずれが生じやすく、退院支援・調整を困難にしていた。 このような中、Ottawa Health Research Instituteを中心に意思決定支援ガイドが開発されており、知識の増大、選択時に生じる葛藤や価値の不明確さを減少させる効果があると報告されているものの日本での普及はあまりなされていない。そこで、先行研究を参考に、医療と保健福祉の両面の項目から成る情報のガイド案と生活環境の快適さ、退院先にかかる費用などの項目から成る価値観のガイド案を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画では、療養場所の選択をした経験を持つ高齢者本人と家族からニーズ調査を行い、意思決定支援ガイドの基盤から作成する予定であった。しかし、平成28年度の診療報酬改定に伴う退院支援加算により、ますます退院支援・調整の体制は促進されてきており、先行研究も多く見受けられた。そのため、先行研究や既存の資料を用いて、意思決定支援ガイドの根幹である「情報」と「価値観」についてのガイド案を作成することが可能であった。今後は、実際に療養場所選択の意思決定を行う必要のある高齢者本人と家族、専門職から確認、評価を行うためのインタビュー調査を実施する予定である。当初計画していた研究方法が変更となったが、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、先行研究から得られた情報と価値観のガイド(案)を用いて、実際に高齢者本人と家族、専門職(医師、看護師、リハビリセラピスト、SWなど)にインタビューを行いながら確認を行い、ガイド(案)の内容の評価、修正を行う。さらに、Ottawa Health Research Institute にある意思決定ガイドのワークブック、国際基準International Patient Decision Aid Standards instrument; IPDASiを用いて、信頼性と妥当性を検討し、多職種で利用できる高齢者本人と家族の価値観を重要視した療養場所選択のための意思決定支援ガイドを開発し、評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は主に文献検討を行い、先行研究から意思決定支援ガイド案を作成しており、フィールドでの研究を行わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、作成した意思決定支援ガイド案を実際に療養場所選択の意思決定を行う必要性のある高齢者本人と家族、専門職に確認、評価を行うためのインタビュー調査を実施する予定である。そのため、次年度使用額は、交通費、調査経費に使用する予定である。
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