超高齢化が進む本邦において、認知症高齢者の増加は経済・社会・医療面においても特に大きな問題となっている。認知症治療に対する医療費の高騰や、それを支える若年層の減少、また施設サービス等の受け皿の不足により、要介護者を支える介護者の負担の増加も挙げられる。そのような社会背景の中、認知症を患う当事者も、様々な生活上の困難さを抱えながらも、残存能力を活かしながら、住み慣れた環境でその人らしい生活を過ごせるように、低予算かつ簡便な方法で提供していけるシステムの構築が求められているといえる。そこで今回、認知症があり、在宅で生活している高齢者とその家族介護者に対して、テレビ電話を用いた回想法を週1回30分の交信として8週間継続し、その前後で認知症の高齢者の行動・心理症状(BPSD)や介護者の介護者負担などの変化を測定した。それらを比較すると、認知症をもつ高齢者はBPSDを示す値が低下し、介護者の介護負担も改善する傾向が見られた。また、定期的な介入を行う中で、家族間の会話や交流が増し、家族関係が良くなったとの報告もアンケート調査からわかった。研究代表者は、これまでにもテレビ電話を用いた音楽療法を行い、同様の改善効果を確認した。ただ、音楽による介入は人前で歌う恥ずかしさが伴い、男性の参加が少ない事が挙げられた。しかし今回の回想法では、男女共に参加しやすい介入である事から、より多く方に対応可能なものであるとわかった。また、今まであまり語られる事のなかった認知症高齢者ご本人の生い立ちについて家族が知る機会にもなり、家族間の繋がりが深まった事も示唆された。
|