以前にMini-Mental State Examination(MMSE)で認知機能を評価した、469名の糖尿病患者を対象に追跡調査を行った。 ①469名のうち12か月間のHbA1c値を評価できた393名を対象に、認知機能障害有無により追跡期間中の血糖管理不良、血糖変動不良の者の割合を検討した。その結果、2群間に有意差はなかった。 重症低血糖の検討については、インスリン療法中の糖尿病患者を対象にした。 ②【認知機能障害のない糖尿病患者に比べて、軽度認知機能障害のある糖尿病患者は、重症低血糖を起こすリスクが高いか】初回のMMSE検査後12か月間の追跡調査により重症低血糖の評価ができた110名を解析対象とした。平均年齢64.8歳±12.3歳、男性61名であった。12か月間に重症低血糖があった者は31名(28.2%)であった。このうち複数回の重症低血糖があった者は24名であった。また、110名のうちMMSE26点以下の軽度認知機能障害があった者は20名(18.2%)であった。軽度認知機能障害があった者の25.0%、軽度認知機能障害がなかった者の30.0%が重症低血糖を起こしていたが、2群間で有意差は見られなかった(p=0.656)。2群間で12か月間の重症低血糖の頻度の結果においても有意差は見られなかった(p=0.602)。 ③【軽度認知機能障害のある糖尿病患者において、重症低血糖の予防に関連する要因】要因毎に重症低血糖を起こした者の割合を算出した結果、重症低血糖を起こした者の割合は、インスリン注射時に家族の支援があった者で12.2%、家族の支援がなった者で39.1%であった(p=0.003)。軽度認知機能障害ありの者のみにおいても、重症低血糖を起こした者の割合は、家族の支援があった者で0%、家族の支援がなった者で35.7%であった。
|