研究課題/領域番号 |
15K20765
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
岩本 祐一 大分大学, 医学部, 助教 (00734659)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 長期入院 / 自殺 / 看護ケアガイドライン |
研究実績の概要 |
長期入院精神障害者の地域移行支援の充実は急務とされており、慢性期統合失調症患者の退院支援の重要性は高い。しかし、退院支援を阻む要因も多々存在しており、その一つとして患者の自殺が挙げられる。慢性期の精神障害者に関しては、抑うつからくる希死念慮を持つ患者への支援の実態やあり方を明らかにした研究が報告されている。また、自殺に至る統合失調症患者の罹患期間が長期であることも多く、統合失調症患者の自殺は急性症状を呈している患者だけでなく長期療養中の患者の問題でもある。自殺に至る時期については、統合失調症の寛解期に生じることも多く、統合失調症の移行期現象として知覚変容発作とよばれる発作性の症状が自殺に繋がる可能性が指摘されている。このように慢性期統合失調症患者の自殺は、現場で退院支援を行う看護師にとって無視できない問題である。本研究は、急性症状を呈しない統合失調症患者の自殺予防を踏まえた退院支援における看護ケアガイドラインの作成、そして将来的には看護ケアガイドラインに基づいた精神科看護師教育プログラムを開発することを目的としている。看護ケアガイドラインを作成するために、本年度は、昨年度収集した質的データを分析し、統合失調症患者に日々直接ケアを行なう精神科看護師がケア対象者の自殺という経験によりどのような気づきを得ていたのかを明らかにしていった。そしてその成果を学会発表にて公表した。得られたデータについては、さらに分析が必要であると判断し、現在も分析を進めている。これによって今後の精神科看護師が行う長期入院患者への退院支援のあり方についての示唆を得ることができると考えている。現在、その分析結果を論文として公表するための準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度実施したインタビューデータを質的帰納的に分析し、学会発表にて成果を公表した。インタビューで得られた質的データのさらなる分析が必要と判断し、現在もより詳細に質的データの分析を行なっている。そのため、質問紙による大規模調査については実施が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、質的データの分析、公表と平行しながら、精神科に長期に入院している統合失調症患者の自殺に関連する看護介入の実態を質問紙を用いて調査していく。そしてその調査を基に、統合失調症患者の自殺予防を踏まえた退院支援における看護ケアガイドラインを開発していくことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
質問紙による大規模調査が、本年度から次年度にまたぐ結果となり、繰越金が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、精神科に長期に入院している統合失調症患者の自殺に関連する看護介入の実態を明らかにするための質問紙を作成中である。この質問紙調査を行うにあたって、用紙代、封筒代、印刷代、郵送費が早急に必要となる。平成29年度の研究目的を達成するために、研究計画にしたがって、質問紙の作成を進めていきたいと考える。また、国内外の学会発表にて、得られた研究成果を周知するための旅費や翻訳費用、研究協力者との研究に関する打ち合わせのための旅費等に使用していく。
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