長期入院精神障害者の地域移行支援の充実は急務とされており、慢性期統合失調症患者の退院支援の重要性は高い。しかし、退院支援を阻む要因も多々存在しており、その一つとして患者の自殺が挙げられる。慢性期の精神障害者に関しては、抑うつからくる希死念慮を持つ患者への支援の実態やあり方を明らかにした研究が報告されている。また、自殺に至る統合失調症患者の罹患期間が長期であることも多く、統合失調症患者の自殺は急性症状を呈している患者だけでなく長期療養中の患者の問題でもある。このように慢性期統合失調症患者の自殺は、現場で退院支援を行う看護師にとって無視できない問題である。本研究は、急性症状を呈しない統合失調症患者の自殺予防を踏まえた退院支援における看護ケアガイドラインの作成、そして将来的には看護ケアガイドラインに基づいた精神科看護師教育プログラムを開発することを目的としている。最終年度に関しては、精神科看護師患者の自殺という経験に関する質的データから、慢性期統合失調症患者の自殺のリスク判断に必要な視点を抽出した。そして、それらの結果を公表するための準備を進めた。しかしながら、質的データの個別性が非常に高かったこともあり、分析に時間を要し、教育プログラム作成のために必要な視点の抽出に留まった。本研究によって、精神科看護師が常に、慢性期統合失調症患者の自殺のリスク判断に必要な視点をもつことで慢性期統合失調症患者の自殺の予防や効果的な支援に繋がること、さらには、個別性が高く、困難とされる慢性期統合失調症患者の自殺の予防には、日々日常生活の支援を行う精神科看護師が自殺のリスクに向き合っていくことが不可欠であることが示唆された。今後も継続して自殺予防のための教育プログラム開発を進めていく必要があると考える。
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