本研究では統合失調症者の神経認知機能や社会的認知機能に着目し、有効なケアについて検討を行っている。2015年から2016年にかけて研究協力病院にて治療抵抗性統合失調症者の調査を行った。治療抵抗性統合失調症者の治療・看護の現状について把握する目的で診療情報をもとに分析を行った。その結果、治療抵抗性統合失調症の基準に該当する者に対して、多様な社会資源を導入するなど、密な医療・看護介入が実施されていることが明らかになった。さらに治療抵抗性統合失調症者に、導入されている社会資源と精神症状、入院回数・日数に関する分析を行った結果、有意な差は見られなかった。 2017年は、統合失調症者の神経認知機能や社会的認知機能の改善や、認知バイアスの矯正を目的とし、2007年にHamburg大学Moritz教授らによって開発されたメタ認知トレーニング(Metacognitive Training:MCT)に着目し、精神科デイケアにて統合失調症者(治療抵抗性統合失調症者を含む)を対象に、その介入効果を検討するための単群比較試験を実施した。 2病院の精神科デイケアにて、1クール10セッションの集団MCTを実施し、参加者へ参加前、参加中、終了時、終了1か月後の計4回の調査を実施した。調査項目は、陽性陰性症状評価尺度(PANSS)、機能の全体的評定(GAF)、サイコーシスの認知バイアス質問紙(CBQp)、ベック認知的病識尺度(BCIS-J)、精神障害者の地域生活に対する自己効力感尺度(SECL)、不適応/適応的コーピング尺度(MAX)、生活の質尺度(EQ-5D)、ベック抑うつ尺度(BDI-Ⅱ)、Rosenberg自尊心尺度(RSES)である。 2病院にて集団MCTを計4クール実施し、20名のデータを得た。詳細は現在解析中である。
|