研究課題/領域番号 |
15K20772
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
武内 玲 兵庫県立大学, 看護学部, 助教 (60707769)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 統合失調症 / 睡眠 / 活動量 |
研究実績の概要 |
平成27年度は「統合失調症患者の睡眠覚醒リズムの振幅を測定し、主観的眠気との関係を明らかにすること」を研究計画に挙げていた。学内と協力施設の倫理委員会の承認を受け、研究を実施する予定であった。しかし、データ収集に入った時点で、研究協力者(統合失調症患者)の多くから、研究協力期間7日間、毎朝測定する予定だった主観的眠気のデータ収集が困難となり、計画を変更することとなった。 よって、平成27年度は、慢性期統合失調症患者の睡眠と活動量の客観的データをもとに、両者の関係性を明らかにした。結果、慢性期の統合失調症患者において、一日の歩数と睡眠潜時(入床から入眠までの時間)に負の相関、一日の歩数と睡眠効率に正の相関があることが明らかになった。つまり、一日の歩数が多い方が、睡眠潜時が短くなり、睡眠効率が上がるということである。睡眠潜時は、20分以上でも5分以内での睡眠障害を疑い、10分前後が一般的と言われている。もともと睡眠障害を持つことが多い統合失調症患者において、一日の歩数が多いほど睡眠潜時が短くなるということは、一日の活動量が睡眠障害の改善に寄与する可能性を示唆している。また、統合失調症患者は、自律神経活動が健康な人よりも優位に低いという研究報告がある中、一日の活動量が多いほど、夜間の睡眠効率が良くなるということは、「日中活動することで夜間の睡眠の質を上げる」という統合失調症でない患者への睡眠への看護ケアが、統合失調症患者にも適応することを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時から研究計画に変更点はあるものの、平成27年度の研究成果は出しており、平成28年度の研究計画は、既に協力施設において倫理委員会の承認を受けており、研究協力者の選定段階である。よって、今年度の研究も予定通り実施し、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、「慢性期統合失調症患者の睡眠と身体活動・自律神経活動・セルフケアレベルの関連」というテーマで、研究予定である。平成27年度の研究より、一日の歩数と睡眠潜時・睡眠効率の関係を明らかにした。しかし、一日の歩数は、運動強度に変換することができず、一概に「動けば睡眠の質が上がる」とは言えない。また、睡眠覚醒リズムを整える看護介入は、患者の退院支援の一つになる。しかし、退院支援において客観的な睡眠指標が改善しても、地域生活に向けて患者のセルフケアレベルを考慮する必要がある。よって、本年度は、「統合失調症患者への睡眠覚醒リズムを整える看護介入プログラムの開発」に向けて上記のテーマで研究を実施し、睡眠と身体活動強度、セルフケアレベルの関係を明らかにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度、交通費が多く必要となるため、ポスター印刷代を別予算で執行したことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度の研究協力施設は、研究者の居住地域より500km以上離れており、新幹線または飛行機を利用する必要がある。協力施設との事前会議や、研究実施にあたり、研究者の交通費として使用する予定である。
|