統合失調症患者の多くに不眠症状があり、不眠によって精神症状が悪化することも少なくない。また、統合失調症患者は、慢性期になると陽性症状より陰性症状が強くなるという疾患特性と、病院にいることで行動範囲が限られるという環境特性により活動量が少なくなることが考えられる。一般の人々は、日中に活動をすることで夜間睡眠の質が改善するが、統合失調症患者における睡眠と日中の活動の関係性について、ほとんど明らかになっていない。 平成27年度は、慢性期統合失調症患者の日中の歩数と夜間睡眠について研究に取り組み、「慢性期統合失調症患者において、一日の歩数と睡眠潜時(入床から入眠までの時間)に負の相関、一日の歩数と睡眠効率に正の相関がある」ことを明らかにした。これらの結果より、一日の歩数が睡眠障害の改善に寄与する可能性が示唆された。しかし「活動量」は「歩数」だけで判断できるものではない。 そこで、平成28年度は、慢性期統合失調症患者の日中の座位時間と夜間睡眠について研究に取り組み、「慢性期統合失調症患者において、長い座位時間は、睡眠効率を悪化させ、中途覚醒時間を延長させる可能性」が示唆された。 平成29年度の予定は、これらの結果を論文投稿することであったが、現在、まだ受理されておらず、投稿には至っていない。しかし、平成30年度も引き続き、慢性期統合失調症患者の睡眠と活動に関する研究を継続するため、残した課題は平成30年度に達成する予定である。
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