本研究は、「急性期病院の認知症高齢者ケアの質向上のためのリンクナース育成プログラムの構築」を目的に実施した。1年目にあたる2015年度は、研究代表者の育児休業等の取得により、一時的に研究を中断した。このため、2016年度より研究を再開し、1年目に実施する予定であった課題に取り組んだ。 2017年度は、研究協力施設の看護部や認知症看護認定看護師等の協力を得ながら検討を重ね、「病院看護師のための認知症対応力向上研修会」を受講した看護師を構成員とした認知症ケアリンクナース活動を開始した。具体的には、認知症ケアの質向上に向けた認知症ケアセミナーの企画・運営や事例検討会等の勉強会といったリンクナース活動を実施した。そして、1年間のリンクナース活動が終了した段階で、取り組んできた活動を評価する目的で、認知症ケアリンクナースを対象にグループインタビューを実施した。 2018年度は研究代表者の育児休業等の取得により、一時的に研究を中断した。2019年度より研究活動を再開し、リンクナース活動後のグループインタビュー内容の評価を行った。結果からは、参加者より、リンクナース活動ではセミナー企画や事例検討会を開催する等、メンバーおよび病院職員の認知症ケアの質向上に取り組んだ。活動内容をメンバー間で話し合いを重ね計画したことで主体的に活動できたという前向きな評価が見られた。また、認知症ケア研修会には、看護職種の他にも介護職や薬剤師といった他職種からの参加もみられ、研修会後のアンケート結果からは概ね好評であったことが示された。事例検討会の実施についても、参加者からは、病棟の枠を超えた情報共有ができたという反応も得られた。 一方で、病棟による認知症ケアの現状と課題に違いがあり、病棟間での取り組みに差がみられる現状も課題として明らかとなった。
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