本研究課題は、在宅療養高齢者の急性疾患による入院を支える学際的チームケアプログラムを開発し、評価を行うことを目的としている。平成29年度は、①高齢者に適した入院環境の調整、②入院合併症の予防介入、③治療・ケア・リハビリの目標・方法共有、④早期退院支援、⑤意思決定支援の5要素に基づくチームケアプログラムを、病床を持つ有床診療所(A診療所)にて導入し、学習会の内容や反応、および入院患者の概況とケアの実施状況から、プログラムの適切性の評価を行った。 1.学習会の内容および反応:A診療所において、3回の学習会を開催した。学習会の内容は、①プログラムの概要、②チームアプローチと入院合併症予防、③チームケアプロトコルであった。学習会参加者は、看護師、介護職、リハビリ専門職、管理栄養士、薬剤師であった。参加が難しかった看護師や医師には別日に資料のみ渡した。学習会の反応から、「日頃行っているケアの目的が明確になった」、「チームの目標を考えることが重要だと思った」等が示され、開発した多職種ケアプログラムが在宅療養高齢者の後方支援病床において、多職種連携やケアを考えるうえで有用であったと考えられた。 2.入院患者の概況とケアの実施状況:入院患者の概況とケアの実施状況について、A診療所の入院患者の診療記録の遡及的調査を行った。調査の対象とした期間は平成26年9月~平成29年8月で、入院患者の特性(年齢、疾患、入院理由等)、支援の内容(介入職種、カンファレンス実施頻度等)、患者の転機(在院日数、退院先、入院中の合併症の発症等)を収集した。認知症等をもつ高齢者に対し、多職種が介入しカンファレンスなど連携についてもよく実施されていたが、学習会実施前後において、介入職種数や患者アウトカムの変化は示されなかった。 本研究結果については平成30年7月第23回日本在宅ケア学会学術集会にて発表予定である。
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