うつ病の原因は、認知と、反すう(失敗や心配事をくり返し考え続けること)であることが指摘されている。しかし、認知と反すうがどの程度抑うつ気分に影響しているかについては報告が希少である。 そこで、第一に、認知と反すうが抑うつ気分に与える影響について検討を行った。看護師を対象に「反すうと認知が抑うつ気分に影響を与える因果モデル」を措定し、共分散構造分析にて検討を行った。結果、モデルは良好な適合度を示し(RMSEA=0.000、CFI=1.000)、抑うつ気分は“反すうのコントロール”と、認知の偏りの一つである“深読み”が影響していることが示唆された(R2=0.427)。さらに、日常で起こりやすい反すうについて分析すると、「仕事のこと」「家庭のこと」の2大カテゴリーが抽出された。つまり、抑うつ気分には、出来事の深読みや、日常的に経験しうる出来事についての反すうが影響していることが推察された。そこで、ネガティブに偏った考え方に対する思考や、思考に影響を受けた行動の取り扱いを得意とする認知行動療法を援用し、反すうに対する看護介入としてのプログラムを開発した。 次に、大学生19名を対象に作成したプログラムを用いた予備介入を行い、修正版のプログラムを作成した。 最後に、看護師10名を対象に、修正版のプログラム介入を実施した。プログラムは1回60分、全8回のプログラムから成り、プログラム終了3か月後までの効果を追跡した。結果、“反すうのコントロール”は有意に向上し、“深読み”は有意に減少した。また、抑うつ気分も減少がみられた。プログラム全体を通じ、中~大程度の効果量が示され、プログラムの参加により、反すうから離れる技術の習得、反すうによって起こる抑うつ気分の改善に繋がった事が推察される。なお、プログラムの効果は、終了3か月後も持続していた。
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