就労移行支援事業所を利用する統合失調症患者にインタビュー調査を実施した。その結果に基づいて21シーンから構成されるアニメーションを作成した。次に精神科デイケアに通院している統合失調症患者にアニメーションの視聴を依頼した。研究協力が得られた5名を対象とし視線を測定し、視聴後に感想を聴いた。画面中央に人物を置いた1シーンでは、特に両目、口を注視していた。人物の両目の平均注視割合は45.4%(SD26.5)、口の平均注視割合は36.9%(SD26.9)であった。背景に明暗を付けていたが、ほとんど注視していなかった。また、画面上に遠近感を持たせた手前に主人公、奥に3人の人物を置いたシーンでは、人物以外の平均注視時間が37.6%(SD=6.7)であった。また、インタビュー調査では、抽象的な表現に対して意味を読み取りといった意見や自身の経験に基づいたアドバイスを得ることができた。視線解析と得られたインタビュー調査の結果に基づいてアニメーションに修正を加えた。修正点としては、背景の色を削除し、ストーリーに必要な人物を概ね中央に位置づけた。また、抽象的な表現を削除し分かりやすい表現に変更した。また、視聴する対象が自身の経験を投影、感情移入できるよう、実体験に基づいたエピソードを挿入し主人公の表情にメリハリをつけた。次に修正を加えたアニメーションを初回の視聴を依頼した対象者に依頼した。5名中3名の研究協力を得て視聴とインタビューを行った。初回視聴時と同様のシーンで比較した結果、注視時間割合に大きな差はなく、中心に人物を配置した際には目や口に注視時間割合が高く、視聴対象の増加に伴い視聴対象以外に注視する傾向がみられた。視聴後のインタビューでは、話に集中することができたといった感想が聞かれた。
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