研究課題/領域番号 |
15K20797
|
研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
本田 光 札幌市立大学, 看護学部, 准教授 (80581967)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 子育て支援 / コミュニティ / ソーシャルサポート / ソーシャルコンピテンス / 尺度開発 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、平成28年度に全国8市町村における調査から、乳幼児をもつ母親726名(有効回答)のデータについて分析を進めた。 まず、母親の「地域とのつながり」意識と個人属性との関連について分析した。統計的に有意に関連が確認されたのは、新しい出会いに挑戦するというような、子育てにおいて必要に迫られて求められることや、忙しい子育てに身体的にも心理的にも手一杯な状況を具体的に表現した項目のみに限られていた。一方で家計の状況が「つながり」意識に関連している項目は多く、経済的な格差が母親の「地域とのつながり」においても影響していることが示唆された。しかし、子育てに温かい地域に暮らすことは、母親の「地域とのつながり」意識を促進することが示唆され、地域づくりの重要性が示された。 次に、地域の人々との交流がない母親の特徴について分析した。交流がない母親は、孤独を感じ、他者と交流をしたいという思いを持ちながらも、人とのつながりに対して好意的に受け止めることが難しく、また他者との関係性を構築するためのスキルも弱いという社会的にも心理的にも不安定な状況にあることが推測された。研究結果より特に対人関係における互恵性を育むことができるような支援が必要であることが示唆された。研究成果は、国内外の学会において発表した。 母親の地域との関係性構築支援のための尺度開発においては、これまでの基礎的な分析を踏まえて、項目分析、探索的因子分析、確認的因子分析の結果、17項目4因子からなる尺度が開発された。尺度全体の信頼性の検証としてCronbachα係数は0.870、モデルの安定性を示すAGFIは0.932であり、十分な信頼性と安定性が保証された。尺度反応性の検証には、「子育ての喜びや悩みを分かち合える友人」の有無など9項目を使用し、全ての項目において友人有り群の得点が有意に高く、尺度反応性も十分であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度末までに予定していた尺度(案)の開発と信頼性やモデルの安定性等の検証は終えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、開発した尺度(案)を用いた本調査を実施する。本調査は、尺度(案)の基準関連妥当性の検証と支援の必要性を決定するためのカットオフ値の推定を目的として実施する。 本調査の対象は、3歳までの子どもを持つ母親1,000名を無作為抽出によりリクルートする予定である。調査方法は、往復とも郵送法とし、回収率の向上のため謝品を同封するなどの工夫を行いたいと考えている。 また、研究の進捗に応じて研究成果については、学会等にて発表し、学術雑誌への投稿も行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度に予定していた論文投稿に掛かる英文校閲は、平成30年度に行うこととした。 (使用計画) 平成30年度には無作為抽出による1,000人のリクルートを予定しており、住民基本台帳の閲覧に際して1件約350円程度の経費が必要であり、また往復の郵便料金1件あたり約210円程度の経費が見込まれている。また、調査協力へのお礼として、1件75円程度の謝品を同封する。論文投稿については、準備ができ次第に英文校閲を専門の業者に依頼する。
|