2015 年度実施状況報告書

現場で使える生活保護現業員のメンタルヘルス支援プログラムの開発

研究課題

研究課題/領域番号	15K20805
研究機関	山形大学
研究代表者	赤間由美山形大学, 医学部, 助教 (90700021)
研究期間 (年度)	2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード	生活保護現業員 / メンタルヘルス支援プログラム / 自己効力感 / 職場のソーシャルサポート / 職場のソーシャルキャピタル
研究実績の概要	本研究の目的は生活保護現場の特性を反映した、現場で活用できる生活保護現業員のメンタルヘルス支援プログラム（以下メンタルヘルス支援プログラム）の開発であり、平成27年度はプログラム開発とその評価指標の策定まで進めることができた。情報収集の方法はPubmed、the Cochrane Library等の英語文献検索エンジン、および医中誌web、 CiNii等の日本語文献検索エンジンを用いて文献検索を実施したほか、生活保護現場に出向いて情報を収集した。特に研究者の先行研究でもメンタルヘルス不調の予防要因として明らかになった自己効力感を含むポジティブ心理学を活用したメンタルヘルス支援の動向、小集団へのアプローチ方法としてのグループダイナミクス、チームビルディングの活用、また生活保護現場で日常的に組織的に取り組まれているケース診断会議に着目し、福祉分野で日常的に活用されている事例研究の手法等について文献検索を行い、最終的にケース診断会議の場を活用した自己効力感向上に働きかけたメンタルヘルス支援プログラムを作成した。また、作成したメンタルヘルス支援プログラムの評価方法も検討し、主要アウトカムのメンタルヘルスをGHQ（General Health Questionnaire) 12で、メンタルヘルスを媒介する変数として自己効力感をVAS（Visual Analogue Scale)で測定することとした。またメンタルヘルス支援プログラムの間接効果として、職場のソーシャルサポートおよびソーシャルキャピタルの向上も期待でき、これらも副次的アウトカムとして、それぞれ職業性ストレス簡易調査票(下光ら2000) の上司・同僚のサポート3項目、職場のソーシャルキャピタル測定尺度（Kouvonen　2006）を用い、自記式質問紙調査として実施し評価することとした。
現在までの達成度 (区分)	現在までの達成度 (区分) 2: おおむね順調に進展している理由 27年度末時点で28年度に予定していたメンタルヘルス支援プログラムの作成、評価指標の設定まで至ることができた。研究デザインは介入研究としているが、28年度に予定していた研究対象施設のリクルートも27年度中に実施でき、3か所の施設から調査協力を得ることができた。本研究のデザインは、生活保護現場にて継続的に生活保護現業員と実施していくプログラムである。このため、生活保護現場の負担も大きいと予測しており介入協力が得られるかどうか懸念していたが、現場のメンタルヘルス支援に対するニーズも高く、介入開始に向け具体的な調整まで到達することができたため、概ね順調に進展していると評価した。
今後の研究の推進方策	平成28年度は開発したメンタルヘルス支援プログラムを用いて具体的に介入を開始する年度である。平成28年6月から平成29年3月まで介入群に対してケース診断会議の場を利用して月1回、1時間程度で全10回メンタルヘルス支援プログラムを実施する。介入群、対照群双方に介入前にベースラインの調査、中間調査として10月に2回目、介入終了後の3月に3回目の予定でメンタルヘルス支援プログラム評価のための質問紙調査を実施する。当初は平成28年度を介入期間、29年度を分析・成果発表の期間としていたが、対象者数の確保、倫理的配慮から、クロスオーバーデザインの介入研究としたため平成29年度も介入期間とした計画に変更する。平成29年6月～平成30年3月まで対照群に対して同様に1年間介入を実施し、介入群、対照群双方に介入前の6月、中間の10月、介入終了後の3月に28年度と同様に質問紙調査を実施する。介入期間が2年間に渡り、介入対象施設の状況も変化することが予想されるため、年度ごとにデータを整理して分析を進めていく。
次年度使用額が生じた理由	平成27年度は文献検索を行いメンタルヘルス支援プログラム作成を中心に実施してきた。計画当初、生活保護現業員のインタビュー調査を予定していたが、形式を変え現場との情報交換という形で情報収集を実施したため、テープ起こしやデータ入力等の費用が発生せず、次年度使用額が生じた。
次年度使用額の使用計画	28年度は介入が始まり研究者が定期的に月1回程度、計10回対象施設に出向く予定である。研究対象施設も当初２ヶ所を予定していたが、3ヶ所と増加が見込まれ、介入期間も２年間に渡るため残額は介入にかかる旅費として充当する予定である。