近年の生活保護現場では複雑困難事例の増加に伴い生活保護現業員の負担は増大しており、メンタルヘルス対策は急務である。研究者らは生活保護現業員のメンタルヘルス不調の予防要因として自己効力感との関連を明らかにしている。自己効力感は自己の成功経験、代理的経験、言語的説得、生理的情動的状態の4つの情報源に働きかけることで高めることができ、高い自己効力感はメンタルヘルスへ好影響を与えることが報告されている。また生活保護現場では集団での事例検討が悩みの共有ややりがいに有効であることが報告されており、集団の場を活用した自己効力感の情報源に働きかけた事例検討はより効果的に自己効力感を向上できると考える。そこで本研究では集団の場を活用して生活保護現業員の自己効力の情報源に働きかける介入プログラム(以下介入プログラム)を作成し評価することを目的とした。 方法は、対象はA県内の3市の生活保護現業員で、B市・C市を介入群、D市を対照群とした。 介入群には自己効力感の情報源である自己の成功経験、代理的経験、言語的説得を強化した事例検討を実施し、自己効力感の情報源等の変化を群間で比較し評価した。 介入プログラムは福祉事務所の希望によりB市では査察指導員が選定した毎回異なるメンバーで実施し、C市では全員参加で実施した。結果はB市では中間時点で自己の成功経験と言語的説得で、介入終了後では代理的経験で正の関連を認め介入効果を確認できた。C市では介入終了後に自己の成功経験と言語的説得で負の関連を認めたが、介入効果を示す肯定的な意見感想が多く、一定の介入効果を確認できた。生活保護現業員の自己効力感の情報源に働きかける介入プログラムは自己の成功経験、言語的説得、代理的経験に効果があった。今後介入プログラムを実施する際には生活保護率の増加や残業時間、日常業務の難しさを考慮して実施する必要性が示唆された。
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