研究課題/領域番号 |
15K20807
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石川 志麻 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 講師 (50598919)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 市町村保健師 / 外部委託 / マネジメント |
研究実績の概要 |
29年度は、市町村保健事業の委託を受けている立場の者が、委託元の行政保健師と、より質の高い事業運営をしていく事を目標としたパートナーシップを築くために必要な要素を明らかにすることを目的に研究を行った。 具体的には、市町村保健師と業務委託で関わった経験を持つ民間企業に所属する者への半構造的インタビュー調査を行った。調査項目は「受託した事業を行うに当たり、保健師と共有すべきだと思うことは何か」「より良い事業に改善していくために必要なことは何か」等であった。調査対象者は保健師、管理栄養士、社会福祉士、社会福祉主事、健康運動指導士、一般事務職であった。調査対象者が経験した受託業務は、地域包括支援センター運営、介護予防教室(運動教室の運営・認知症予防教室のボランティア養成)、特定保健指導などであった。「自分から相談をすれば、保健師は話は聞いてくれる」と全員が回答し、受託側として委託元保健師とのコミュニケーションに大きな困難を感じている者はいなかった。だが、事業改善案の提案に対し、詳しい説明もなく却下されたり、外部委託事業に対する責任感の薄らぎを感じさせる言動があったりすると、協働へのやり辛さを感じていた。受託側としては「事業に対する最終責任は行政にある」と感じており、行政側が事業へのビジョンを明確に説明できなかったり、企業が考案した事業案をヒアリングした後にアイディアのみ使用され「企業の知的財産の盗用」と感じると、信頼関係が崩れ、その自治体と契約している受託事業を改善していこうという意欲が下がることが分かった。 保健師と共有すべきだと思うこととして、どの職種の者も「行政側のビジョンを共有したい」と回答した。行政側が自分たちの事業であるとの責任感を明確に持ち、その事業を「誰を対象として、何のために行うのか」という事業目的とビジョンを明確に描いて共有する能力を強く求めていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題採択時には予期していなかった所属教育研究機関の異動と転居があった。そのため調査対象フィールドとして予定していた場所が遠方になり、新たなフィールドの開拓を行うなどした。これらの理由から、研究期間延長申請も行った状況である。
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今後の研究の推進方策 |
様々な職種の者にインタビュー調査を行った。全体分析のほか、職種や受託業務の種別によって特徴があるのか等、データの分析を進めていく。また、昨年度に行った委託を行う側の行政保健師への調査結果と比較をし、より良い保健事業を目指していく上で共有すべき事項が何かという分析を進める。成果の公表として、日本公衆衛生学会での学会発表や日本公衆衛生看護学会への論文投稿を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー調査が年度末にあったため、年度末時期に生じた経費の支払い・精算手続きが平成30年4月以降になる。また、研究者の所属機関が変更になるなどに伴い、研究期間を延長申請した。これから精緻なデータ分析を行って成果発表に研究費を使用する予定である。具体的には英文校正や論文投稿(日本公衆衛生看護学会を予定)、学会発表(日本公衆衛生学会を予定)等に必要な経費に使用する予定である。
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