29年度は、市町村保健師と業務委託で関わった経験を持つ民間企業に所属する者7名への半構造的インタビュー調査を行った。30年度は29年度に追加して3名(地域包括支援センター管理者(社会福祉士)1名、健康運動指導士2名)の対象者に調査を行った。3名とも高齢者支援に携わる事業委託を受けており、国の制度の変化により受託事業の内容も影響されることが語られた。 市町村の委託事業担当者は保健師に限らず、事務職である場合も増えている。受託側もさまざまな職種のものが事業を担っている現状があり、互いにどのような職種であれ、保健事業について共通認識ができるツールが求められていることが分かった。ツールを用いる際には具体的な項目、特に行為レベルのチェック項目だと委託元の行政職員に対し「できていない」と苦言を呈したと受け止められて今後の受託に影響することが懸念され、受託側は使用しづらい。保健事業の実施単位ごとで評価ができるもの、年度単位で事業評価ができるものの2種類があると良いとの意見があった。委託側・受託側のそれぞれの立場や、意見の相違などから起きる感情に左右されずに「何が良いのか/どこに課題があるのか」を共有し、それについて「いつまでに・どのように・誰が・何を行うと改善されるのか(より良くなるのか)」を共通認識できるマトリクス的な枠組みがツールとして求められていることが分かった。特に「誰が」の部分は「保健師・受託事業者・参加者等」など具体例を示し、それぞれの立場で何をしたらよいのかをフラットに語れる表現で示しておくことが重要である。 インターネットで公開するなど自由に使えるツールとすることで受託事業者側からも事業評価を協働で行う発案をしやすくなることが分かった。今後は開発したツールの公開に向けて検討を進める。
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