本研究の目的は、小規模離島町村に勤務する新任期保健師の看護実践能力の向上につながる経験を明らかにし、離島町村における新任期保健師現任教育への示唆を得ることである。研究対象者は、人口3、000人未満の離島町村で働く保健師経験期間5年未満の常勤保健師とその上司とした。 平成27~28年度は調査及び調査の全過程を完了した研究対象者の個別分析を行った。平成29年度は個別分析を踏まえ全体分析を行った。 調査項目及び調査方法は、「保健師の活動背景」は新任期保健師に質問紙で調査し、「保健師としての看護実践能力向上のきっかけと保健師の内面的変化」は新任期保健師にリフレクションを促しながらのインタビュー調査を一人当たり1年間で3回実施し、「保健師としての看護実践能力の到達度評価」は質問紙にて新任期保健師の自己評価及び新任期保健師の上司の他者評価を実施した。 分析は、行政保健師のリフレクションの流れを参考に作成した分析枠組みに基づき行った。個別分析では、新任期保健師の語りから「気にかかる現象に対する認識と感情」を抽出し、これによりもたらされたあるいは影響した「気にかかる現象についての吟味・探求の思考による内面的変化」、「看護実践」、「価値観や信念の形成」、「他者との関わりや周囲の状況」を抽出し、経時的に整理した。次に「看護実践」と「価値観や信念の形成」の変化から看護実践能力の向上を確認し、向上のきっかけとなった「気にかかる現象に対する認識と感情」と「気にかかる現象についての吟味・探求の思考による内面的変化」、「看護実践」、「価値観や信念の形成」、「他者との関わりや周囲の状況」を看護実践能力の向上につながる経験とした。 全体分析では、「看護実践」と「価値観や信念の形成」の変化から、向上した看護実践能力の領域を判断し分類した。看護実践能力の向上につながる経験について、3名分の結果を合わせて質的に分類した。
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