本研究は、調査対象者を60歳代に限定し、就労や地域参加、家庭内の役割を含めた社会的役割と健康課題、健康支援のニーズを具体的に把握し、60歳代男女の社会的役割における集団の特性に応じた健康支援の示唆を得ることを目的とした。 平成28(2016)年度に、調査協力を得られた自治体の60歳代住民を対象に、無記名自記式質問紙調査による社会的役割と疲労感に関する調査を実施した。健康状態の把握は、就労者を対象とした尺度として、信頼性・妥当性が報告されている蓄積的疲労兆候調査票の一部を省略した尺度を使用した。尺度の使用に際しては、妥当性について尺度作成者と確認した上で使用した。その結果、以下の点が明らかになった。 ①役割は、就労>役割なし>孫の世話>介護の順に多く、その点は男女共に共通していたが、各役割の割合は性別で異なる。②役割別の健康課題では、就労者は身体的な疲労の訴えが高く、役割なし群は持病や精神的な訴えが高く、介護群は心身両面の疲労感が高いことから、役割別に疲労感の訴えは異なる。③就労や孫の世話を継続している者は、健康状態が良好で健康づくりに積極的な者が多く、役割継続の重要性が示唆された。④就労者の疲労感には、健康意識と暮らし向きが関連を示した。 分析により得られた結果について、国内外の学会にて発表し、研究者・実践者との意見交換を行った。本研究の意義は、社会的役割別の健康課題が明らかに なった点と役割継続の重要性が示された点である。
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