HuRと結合する化合物を承認薬ライブラリーからスクリーニングし、8種類の化合物がDSF(differential scanning fluorometry)にて濃度依存的に温度変化があることを見出した。その中から、特に有効と考えられた化合物に対し、SPR(surface plasmon resonance)を行い、特異的にHuRに結合していることを確認した。HuRと特異的に結合する化合物としてSuraminが見出された。 Suraminは抗トリパノソーマ薬として開発された薬剤であり、前立腺がんに対して臨床応用されたこともある。一定の成果はでているが、研究は進んでおらず、Suraminのどの作用が、がんに効果的なのかも明らかにされていない。SuraminがHuRの機能を阻害することがわかれば、Suraminのメカニズムを解明する上で大きな発見となる。またHuRノックダウンは、口腔がん細胞の悪性形質を著しく減弱できるため、SuraminがHuRに作用するのであれば、口腔がんに対してより強い抗がん作用を示し、有効な抗がん治療法となる可能性があると考えられた。 これらの理由から、Suraminをヒット化合物として選択し、舌がん細胞株であるHSC-3に対して作用させた。まず、HuRの機能であるARE-mRNAの安定化に対する作用を確認するため、c-fosやcyclinなどのmRNAをReal time RT-PCR方にて確認したところ、これらのARE-mRNAの総量が低下していることが確認できた。スクラッチアッセイを行い細胞運動能を、matrigel invasion chamberを用いて 浸潤能を検索したところ、舌癌細胞株に悪性形質の減弱が見られた。 これらより、Suraminは口腔がんに対する新しい治療方に成り得ると考えられた。
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