『自衛―独立ユダヤ週刊新聞』はドイツ語によるユダヤ民族主義の宣伝新聞である。ヘルツルのシオニズムが「ユダヤ人国家」の建設を志向していたのに対して、『自衛』は、オーストリア民族連邦の枠内でのユダヤ民族による自治を構想していた。『自衛』は、オーストリアのユダヤ民族の存在意義を民族対立の調停者に求めた。この役割からは、多民族国家におけるユダヤ人の自己同一性をめぐる議論の所在を指摘できた。オーストリアのユダヤ人による調停者としての使命の認識は、国民国家としてのドイツ帝国のユダヤ人からは提起されえなかった視座であった。
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